おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

この挨拶文で御礼は完璧

出棺前の霊柩車の横に喪主様がマイクを持って立ちました。始めての葬儀の経験でした。 マイクを持つ手がプルプルと震えています。悲しみと緊張が伝わります。


「本日はご会葬を賜りましてありがとうございました。おかげさまで通夜、葬儀を、滞りなく済ますことができました。生前はご交誼にあずかり、本日は最後までお見送りいただきまして、故人もさぞかし皆様に、感謝していると思います。なお、残されました私達に対しまして、今後とも変わりなき、ご指導ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。本日は、ありがとうございました」


昨夜、日頃使用しない言葉を必死で丸暗記し、声を振り絞ってのご挨拶に、聞いている全員がホット安堵の息を漏らしました。


喪主の挨拶は簡潔明瞭に済ませるよう心掛けてください。中には亡くなった方の思い出等を長々話す方もおられますが、出棺時間の都合もあり具体的には3分以内が目安です。
なるべく余計なことを言わないのは葬儀の場では禁句の言葉が多いからです。縁起の悪さを連想させる言葉や、控える言葉を「忌み言葉」と言います。遺族の代表者である喪主として話すからには、常識と言われる言葉のマナーを守って、挨拶を考えてください。


不幸が重なる事を意味する忌み言葉には次の文例があります。
重ね重ね、ますます、しばしば、いよいよ、次々、再び、再三再四、繰り返す、返す返す、くれぐれも、いろいろ、またまた、なおまた、わざわざ、たまたま、などです。
不吉な忌み言葉で使わないのは、次の文例です。
消える、落ちる、数字の四(死)、九(苦)などです。
直接的な表現も避けてください。
死亡は逝去と言い直し、 急死は突然の事に変えます。


私がマイクを持った時は次のように挨拶します。


「以上を持ちまして故○○様の葬儀式を、ご終了とさせていただきます。葬儀式終了に際しまして、本来でございましたら、喪主様より皆様方お一人お一人にご丁寧に、ご挨拶を申し上げますのが、本意ではございますが、突然のことゆえ、いまだ持ちまして、お気持ちの整理もつかぬまま、この時を迎えられました。まことに僭越に存じますが、ご当家に代わりまして、一言御礼のご挨拶をさせていただきます。
○○様生前中は、皆様方には何かとご厚情を賜りまして、誠にありがとうございました。その上、この度の葬儀式を滞りなく終えることができましたのも、ご参列いただきました皆様方のご協力の賜物と、心より感謝申し上げます。また、昨夜からのご弔問、並びに身に余るご弔意、先ほどはご丁重なるご焼香まで賜りまして、故人様もさぞかし感謝申し上げておられると存じます。○○様亡き後、ご家族皆様方にも故人生前中と変わりませぬお付き合い、ご厚情を賜りますようお願い申し上げます。まことに意を尽くしえませんが、これを持ちまして会葬御礼のごあいさつに代えさせていただきます。本日のご会葬、誠にありがとうございました」


あなたも、マイクを持ってこれだけ言えれば、喪主挨拶は完璧です。

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