おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

受付の係を頼まれた人へ

お葬式を行うには、様々な係を決める必要があります。一番大事で最初に決める必要があるのは喪主様です。この方が決まらないと、お葬式の内容の決定が出来ません。家族以外の方が弔問に来られるお葬式ならば、受付を手伝う係の人が必要です。家族葬でも親戚が来るとかご近所が来るかもしれないと予想される場合は受付を設けますので係を決めてもらいます。受付を依頼する相手に特定の決まりはありません。遺族が「任せたい」と思った方が受付を担当します。一般的には直系の親族の方、ご近所や町内会の方、会社関係者の方が多いようです。小規模であれば親族が交代で行うケースもありますが、やはり、万が一の「香典泥棒」を防ぐ意味でも「受付の責任者の方はしっかりと決めておいてください」とお願いしています。


近年お葬式に参列した経験が無い方や、お葬式の受付をしたことのない方も随分増えてきました。頼まれてもやり方がわからず不安になるようです。よく聞かれるのが「受付を頼まれたけれど具体的に何をするのか分からない」とか「弔問の方をお迎えするのに言葉遣いやマナーを教えて欲しい」などがあります。


受付係の大きな役割は弔問客からの香典を受け取り芳名帳に記載してもらいます。そして当日返礼品を渡す業務です、その他にも参列者から化粧室や駐車場の場所を尋ねられるなどの細々とした仕事も出てきます。規模によっては受付係が式場の案内をする場合もあるので式場までの動線も確かめておくと良いでしょう。受付係は事前確認などがあるため、お葬式の1時間前までに会場に着いているのが理想です。スタッフから流れの説明を聞き、開式の30分前には受付が出来る体制を整えます。


弔問客が受付にいらしたら、「お忙しいところお越しいただき、ありがとうございます」と挨拶します。天気が悪いときは「お足元が悪いなか、お越しいただきまして」などに言い換えると丁寧です。弔問客が親族の場合は「この度は心よりお悔やみ申し上げます」と述べます。そして芳名帳に住所と名前を依頼します。「恐れ入りますがこちらにお名前とご住所をご記入ください」と付け加えます。弔問の皆様からお香典が差し出されたら「お預かりします」と言い、一礼して両手でゆっくり受け取ります。お供物を持参している場合もお礼を伝えて受け取ります。お供物は葬儀スタッフに渡し、弔電は司会者に渡します。返礼品は両手で渡すのがマナーです。その際「こちらは香典返しです」「お返しをどうぞ」と添えます。お香典が連名の場合は人数分お渡しします。


会場へ案内する場合は「あちらでございます」と伝え着席の場所を伝えます。受付をする際は弔事の場で使用してはいけない「忌み言葉」(いみことば)に注意します。直接的な「死」を連想させる「死去」「死亡」「亡くなる」などの言葉は避けます。これらのことを話題にする時は「ご逝去」という言葉に言い換えます。


受付は、ご遺族に代わって弔問客を迎える大切な役割です。香典を扱うため金銭的な責任もあります。喪主から受付を依頼された際には、やむを得ない事情がない限りは断らないのがマナーです。喪主やご遺族が貴方を信頼しているからこそ、頼まれたのですから、故人の供養のためにも、必ず受けてください。

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