おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

かかった費用は幾らなの

「結局、お葬式にはいくらほど、支払ったのでしょうね」と一周忌法要を済まされた奥様が話し始めました。「いえ、お葬式代が高かったと言っているのでは無いのよ。無事に送り出すことが出来て満足のいくお葬式で旅立させたのは良かったと思っています。でも、かかった金額はお葬式代だけでは済まなかったのに気がついたの。人が亡くなると思った以上に手元からお金が出ていくのね」確かに一周忌を過ぎて心の平静を取り戻し改めて思い返すと、亡くなってからお葬式を済ませその後の手続きが終了するまで、結構な金額が支払いに出ていったことに気がつくのです。


亡くなる前の医療費も思った以上の金額になることがあります。入院、手術、退院、再入院、転院、老健入所と次々とお金が出ていきます。亡くなると死亡診断書や死体検案書を貰うのにお金を払います。これは当然保険適用外ですから高価です。


お葬式が決まっても火葬場が混んでいたりするとお葬式までの日時が待たされます。高齢化社会でどこの火葬炉もパンク状態なのです。連日取り換えるドライアイスの追加費用がかかります。よく勧められるエンバーミングも結構高価です。


葬儀屋が請求する費用の他にも自治体に払う火葬代やお寺に払うお布施も高価です。無事に終わっても位牌購入、四十九日法要のお布施、納骨費用、お墓に名前を彫る代金、名前を入れる前の魂抜と納骨時のお布施、墓石屋への支払いなどがかかります。


親戚一同を呼んでお香典を貰いますから、そのお食事代や返礼品にお金が出ます。


お葬式後に次々と期限が押し寄せる手続きにもお金がかかります。書類提出の度にあらためて死亡診断書を書いてもらい提出するように言われます。再度診断書を請求すると自費医療ですから、そのたびに結構な金額が派生します。


相続関係も結構な金額が出ていきます。親族を示す戸籍等の収集は膨大です。そのたびに関係者全員分の印鑑証明書を集めたりするは困難な作業です。収集する枚数が増えることにより手数料の額もどんどん大きくなります。改製原戸籍や除籍謄本は750円戸籍謄本450円ですが、枚数が次々と増えると安い金額ではありません。


亡くなった夫から残された妻に土地と家の名義変更だけでも、資料収集費用、登録免許税、司法書士報酬と飛ぶようにお金が出ていきます。登記申請には法務局に支払う登録免許税を払います。計算方法は「不動産の評価額×1000分の4」です。


相続の名義変更手続きはご自分でも可能だと言いますが、相続人が次々出てくると個人ではどうしようも出来ません。結局司法書士に依頼して報酬を支払います。依頼する司法書士によって金額は異なりますが、相場は全国平均で10万前後です。この辺りまでを「お葬式代」と見るとアッと言う間に100万から300万程の金額が「葬儀費用」以外に出ていくのです。


自分の時は「家族葬」で総額50万位でと思っていても、トータルでは結構な金額が最終的に費やされます。人が一人亡くなると思っている以上に大きなお金が出ていくのです。見送ってくれる人に金銭的負担がかからないように望むならその費用も考えてください。

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