おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

極楽浄土を見学してみる

あなたは生前に、殺生を一回もしませんでした。夜中にプーンと飛んできた蚊や地面を這っていた蟻も殺したことがありません。嘘は一回もつきませんでした。自販機の下に落ちていた10円も拾いませんでした。配偶者以外との行為を経験しませんでした。お酒は一滴も口にしませんでした。この人が亡くなると枕元に阿弥陀如来が迎えに来てくれて、極楽浄土まで導いてくれます。私には縁がなさそうですが、極楽浄土とは、いったいどんな場所なのか興味が湧きませんか?


「仏説阿弥陀経」という教本に極楽の様子が詳しく書かれています。
はるか昔に阿弥陀様が西の方へ十万億進んだ彼方に極楽浄土を作られました。
浄土では現在もお釈迦様が人々を救うために説法をしてくれます。


とても過ごしやすい気候で天からは花の雨が降り、心地よい音楽が流れてきます。
大地は黄金です。周りには宝の樹木がたくさん生えています。樹木は七宝で作られて、金の樹木や、銀の樹木、水晶の樹木、白い貝の樹木、赤いルビーの樹木、青い瑠璃の樹木、メノウの樹木などがあります。それらにはやはり七宝の葉がしげり、宝の実がなります。


至る所に宝の池があります。池には八功徳水(はっくとくすい)が満々と湛えられ、池の底には金の砂が敷き詰められています。八功徳水とは、八つの功徳を備えている水で、甘い、冷たい、やわらかい、軽い、清らか、臭くない、飲む時に喉を傷めない、飲んでお腹をこわさない、などの八つの特徴のある水のことです。


池の水面には、車輪くらい大きな蓮華(れんげ)の花が咲いています。色々な色の花は良い香を放っています。一つ一つの蓮華の花には、百千億の花びらがあり 白や黒はもちろん、黄色や朱色、紫など、限りない色の輝きを放っています。その一つ一つの宝の花は、三十六千億の光を放っています。その光から、三十六千億の紫金の仏さまが現れます。


妙なる音楽が流れ、色々な鳥が美しい声で鳴いています。鳥のさえずりや、水や風の音はそのまま説法となり、人々はその妙なる音を聞きます。それは、百千の音楽を同時に聞いたようなすばらしさです。その音を聞くと、皆、仏と法と僧の三宝のご恩を念ぜずにおれないのです。


極楽浄土の食事は面倒な準備はしなくても、自然に目の前に七宝の食器が現れて、「百味の飲食(ひゃくみのおんじき)」が満たされます。ところが実際に食べる人はなく、それを見たり、かぐわしい香りを味わったりすると、食べる前にお腹いっぱいになります。すると食事は、手間のかかる片付けはしなくても、ひとりでに消えてしまいます。


食事を終えると散歩に出かけます。周りに鶴や孔雀、オウムの鳥がいて、それぞれ仏法を説いています。
阿弥陀仏が極楽浄土の講堂で、妙なる法を説法なされるときには、皆集まって聴聞し、心に喜びと悟りを生み出します。


日本人が知恵を絞り、考え出した憧れの素晴らしい世界です。亡くなった後に連れて行ってもらえるよう、可能性のある方は、日々精進をしましょう。

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