あなたはどの棺桶を選ぶ?
人生の最後に使用する家具が棺桶です。ご遺体を納めて葬るためのベッドです。
病院から搬送されて自宅のお布団で安置されているときは、まるで眠っているように
感じていたご遺体ですが、いざ棺に納まる姿を見て、
「本当にこの人は亡くなってしまったのだ」
と、皆様が実感するのです。
棺(ひつぎ)柩(ひつぎ)の文字がありますが意味の違いをご存じですか。
まだ遺体が入っていない状態を「棺」と呼び、中に寝かせて納まった状態を
「柩」と呼びます。
ですから、空の「ひつぎ」を持ってきて納める前の儀式が「納棺式」となり、
ご遺体が納まった「ひつぎ」を運びだすので「霊柩車」と呼びます。
棺桶の値段ほど、わかりにくい家具はないでしょう。葬儀屋もそこにつけ込み
法外な価格を売り込みます。
セット価格に組み込まれている棺桶は、中国製のベニヤ合板を接着剤でつけただけの
一番安価なものが多く、
「これでは、最後の旅立ちが可哀そうです」
と言いくるめて10万、20万と良い棺桶にグレードアップさせるようにします。
最高級品は天然木を用いた木棺で、檜(ヒノキ)、桐(キリ)などの無垢材で作られ、
周りに豪華な彫刻を施し、価格が200万円を超えるお棺もあります。
現在の主流は合板布張り製で5万から10万ほどがよく売れています。
世界的なエコブームの流行で、段ボールで作られた紙製の棺が話題になったことが
あります。木製の棺を火葬したときの二酸化炭素の排出量も少なく、火葬設備にも
負担をかけません。
しかし、需要がまだ少なく、合板布張りの棺より価格が高くなるのが欠点です。
棺桶の大きさは長さ6尺(180センチ、)幅53センチ、高さ40センチ、が標準です。
死産児のエンジェル棺、子供用の3尺(90センチ)などもあります。
入ってみると、足は延ばせますが肩幅が窮屈です。
葬儀屋が納棺時に、両手を組ませるのは、幅が狭い棺桶にスムーズに入れるように
するためです。蓋を閉めると圧迫感も感じます。
私は、当然入ったことがありますが、この頃、納棺時に周りで見ている家族や親族が、
「入ってみてもいいですか」
とリクエストされることが多くなりました。テレビなどで生きているうちに棺に入ることが紹介されて、葬儀屋が「入棺体験」というイベントをするようです。
生きているうちに棺に入ると長生きするとの言い伝えもあるらしく、入棺体験希望者は、 増えてきています。
ヒノキの香りに包まれて、豪華な木棺で旅立つか、接着剤の香りに包まれて、べこべこの 中国産のベニヤ棺で旅立つか、あなたはどの棺桶を選びますか?