おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

夫が死んだら名前を変更

前回、夫が死んだ後に「婚姻関係終了届」を提出し、夫の両親の介護や夫との婚姻で生まれた親戚との付き合いを解消する「死後離婚」についてのブログを綴りました。その内容に目を通されたムラゴンの皆様から結構な反響がありました。あらためて伝えます。世の男性諸君は「妻にお任せ」などとお気楽な老後生活を送らないでください。毎日我慢しながら傍に居てくれる奥様を大事にしないと、あなたの死後は修羅場が待っています。


今回は夫が死んだら元の名前に戻りたい奥様が増えていることをお伝えします。夫が死亡すると残された妻は、そのままの現在の姓でいるか旧姓に戻すかを自由に選べるのです。旧姓に戻す事は、これからの老後生活を新たらしい人生で歩みたいと希望する人に一つの方法です。旧姓に戻す場合に市町村の役所に提出するのが「復氏届」です。復氏届は今の姓を変えるだけなので、死亡した夫の家族と親戚との姻族関係は残ります。夫の両親との縁を完全に切りたいと願う姻族関係の消滅を望む場合は「姻族関係終了届」を提出します。


復氏届を提出できるのは本人のみです。旧姓に戻す理由の多くが、結婚前に働いていた元の職場に復職したい等があげられます。本籍地以外で提出する場合は戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要になります。本籍地の場合であれば戸籍謄本は不要です。復氏届を提出する場合は死亡した夫の戸籍から抜けるため、新しい戸籍を作るか結婚前の戸籍に戻るかを事前に決めておく必要があります。結婚前の元の姓に戻すなら婚姻前の戸籍謄本も必要となります。又、結婚前の姓に戻りたくない場合は分籍届を共に提出する必要があります。結婚前の戸籍に戻す場合は「もとの戸籍にもどる」にチェックを入れます。住所欄には戻る先の本籍と筆頭者の氏名を書きます。両親が亡くなり戻る戸籍がない場合は、復氏する届出人を筆頭者とする新戸籍を作ります。「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れて新しい本籍と筆頭者の氏名を記入します。復氏届は一度提出し受理されると元の姓(復氏届提出前の姓)には戻れません。


復氏届を出すメリットとして次のことがあげられます。姓を戻すことで精神的に楽になることがあります。復氏届だけでは完全に夫の親戚との関係は切れませんが、姓が変わると今までお付き合いも無くなり、これからの人生を楽しむ大きな転換と出発点になります。


夫の死去の後、実家に戻る場合は旧姓にしたほうなにかと便利です。いろいろな契約関係の書類の記入などで、実の親と一緒に住んでいるのに、自分だけ姓が異なると面倒な事が多々あります。結婚を機に退職したが夫の死後に復職する場合、独身時代に仕事をしていた方は元の名前に戻したほうがスムーズに職場の関係を構築することができます。


復氏届は提出をした妻の姓のみが変更されます。死亡した夫との子供の姓は変更されません。子供の姓を自分の姓と同じ姓にしたい場合は、家庭裁判所に子供の姓の変更許可申立書を提出して許可審判を受けなければなりません。許可が通れば復氏届をした本人の戸籍に入籍する「入籍届」を提出し同じ姓になります。


当然、姓を変えることで名義変更の面倒な手続きが出てきます。運転免許証や銀行口座、公共料金や生命保険クレジットカード携帯電話など諸々変更する手間があります。それでも、現在の名前から生まれた時の慣れた旧姓に戻る事を望む夫を送った妻がいるのです。


読者の皆様の奥様は、あなたの死別後も今の姓を名乗り続けてくれると思っていますか?

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