おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お葬式後は面倒な手続き

お葬式を終えてご自宅に戻り、葬儀屋が組み立てた後祭り祭壇に、遺影と骨壺を安置すると、皆様はこれまでの緊張が解けてホッとなさいます。「お葬式の時はちっとも悲しくなかったけれども、無事に終わり家に帰ると急に涙が出てきてビックリした」と言われるご家族も多いのです。しかし、あまりゆっくりとしていられる時間はありません。葬儀後に行わなければならない数々の手続きは結構待ったなしでやってきます。


葬儀後に急ぐ手続きを大きく分けると、故人宛の給付金停止、名義変更、相続に関する問題、葬儀給付金の申請などがあげられます。その中で速やかに行わなければいけないのが、年金に関する手続きです。故人が年金受給者であった場合は受給停止の申請をしなければなりません。給付停止の手続きは、死亡日から14日以内です。未支給の年金がある場合は受け取ります。また子どものいる配偶者は遺族年金を受給できるので請求申請を行います。申請先は、国民年金は市町村の役所、厚生年金はその地区の年金事務所、共済年金は共済組合に行きます。多くの人が死亡届を出せば自動的に支給が止まると誤解されていますが、年金の停止は申告制です。手続きを忘れて死亡後も支給されてしまうと、その取り消しの手続きが非常に面倒になります。ほおっておくと犯罪行為と見なされることもあります。よくニュースになるのが、死亡した親を家でミイラにしておき、年金をもらい続ける息子の逮捕です。必ずマスコミが取り上げるのは不正習得を絶対に許さないと言う役所の姿勢からきています。


戸籍の変更も14日以内に市町村の役所に申し出ます。故人が世帯主だった場合は、変更の手続きが必要です。死亡届を出すと手続き案内の用紙を渡される市役所も多いです。


相続に関しては相続放棄や限定承認の手続きと相続税の申告があります。故人の遺産は相続人によって分割相続されますが、プラスの財産だけでなくマイナスの負債も相続の対象となります。そのため相続の権利を放棄する財産放棄か、あるいは相続したプラスの財産の範囲内でマイナスの負債を弁済する限定承認などが必要です。共に期限は3か月です。これを過ぎると単純承認と呼ばれるプラスもマイナスもすべての相続を承認したことになります。遺産は基礎控除額を超えた分だけ相続税の納付をしなければなりません。相続の放棄や限定承認の期限は相続の開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に行きます。相続税の申告と納付は相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署で納めます。


健康保険の埋葬料や葬祭費の申請は、会社員などが加入する組合健康保険と自営業者などが加入する国民健康保険に分けられます。前者であれば、埋葬を行う人に埋葬費が払われ、被扶養者が亡くなった時は被保険者に家族埋葬料が支給されます。支給金額は5万円です。後者であれば葬儀を行った人に葬祭費が支給されます。支給金額は自治体によって異なりますが3万円から7万円程が一般的です。又、業務災害か通勤災害で亡くなった場合には労災保険の葬祭料を申請します。死亡から2年以内に健保組合か国民健康保険の窓口に申し込みます。労災の葬祭給付の申請も死亡から2年以内に労働基準監督署に出向きます。


このほかにも亡くなった年の故人の所得には相続人の準確定申告が必要です。又故人が生命保険に加入していたら保険金請求を忘れないで行います。故人が生前中に受けていた医療費のうち自己負担額が一定額を超えた場合は高額療養費が払い戻されます。解約手続きも急ぎます。ガス水道電話、インターネットなどの引き落とし銀行口座の変更、クレジットカード、介護用品のレンタルの契約解除など家族には大仕事が待っています。

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