おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

家族葬で悩んだら一日葬

ほとんどが家族葬になりました。しかし家族葬を選ぶご遺族が一番頭を悩ますのが、出席をお願いする参列者の選別なのです。家族葬の特徴は出席者を限定する点ですが、喪主が自由に参列者を決められる分、どなたまでに連絡して参加をお願いするかの線引きがとても難しいのです。中には家族葬の文字通り、同居している家族だけと割り切るご遺族もいらっしゃいますが、そうなると先日のブログでも触れたように、連絡が漏れた関係者から葬式に呼ばれなかったと苦情が出ることがあります。これが家族葬のデメリットなのです。


亡くなった故人が会社の現役で働かれていたとか、リタイアしていても町内会や趣味の会でお知り合いが多くおられるなどのケースには、家族だけの家族葬はお勧めしません。葬儀後に訃報を知る方が多くなるため自宅への弔問客が増え対応に追われる毎日になります。


ご遺族との打ち合わせの中で、故人の交友関係が多いと解り、家族葬ながら親戚関係を含むある程度の連絡をしようと考えてをおられる喪家様には通常のお葬式をすすめる事が多いのですが、あまり大げさにはしたくないと、ご希望がある時は一日葬の提案をします。


一日葬とはその名の通り一日だけの葬儀の形です。葬儀会館で行なう通常のお葬式の一日目はお通夜です。翌日の二日目に告別式と火葬を行います。後半の告別式と火葬だけを葬儀会館で執り行うのが一日葬です。お通夜はご自宅で参列者を呼ばずに家族だけで行います。翌日のお昼ごろに、参列者の制限をしない一般の方も参列できる告別式を行ないます。


葬儀会館で一日目に行うお通夜はご遺族負担が大きいのです。参列者への挨拶が長時間続きます。その後の親戚との会食が夜通し続き、お棺の傍で線香守りや寝ずの番などもします。お通夜を自宅で行えば故人と過ごす時間を充分に確保できます。親戚には告別式だけ来てもらうように説明できるので、集まる親戚に宿泊先を手配する必要も無くなります。お通夜の食事や会葬品などの用意もいりません。確実に喪主の負担は軽くなります。


一日葬では告別式の時間がお昼になりますから参列者が限られてきます。日中に仕事ある方は葬儀に参列しません。言い換えるとお通夜ですと、故人と関係の薄い参列者も「顔出しぐらいしようか」と出席することがありますが、昼の時間帯ですと故人とのつながりが深い方だけが、時間を作り参列することになります。結果的に訃報の連絡を大切な関係者の方々に伝えなかったと言う、家族葬のデメリットを防ぐことが出来ます。


家族葬のメリットである家族の負担を出来るだけ減らす要素を残し、訃報を関係者に伝えないデメリットを無くせるのが一日葬なのです。高齢者が多くいる家族構成だと二日間のお葬式は体力的に厳しいこともありました。一日ですべてが完結する一日葬はご家族の疲労も軽減してくれます。通夜料理や参列する親族の宿泊費なども必要なくなるので時間と費用を抑えるお葬式が行なえます。


一日葬はお通夜の時間帯を自宅で過ごすことで故人をゆっくり偲ぶことが出来ます。故人がお別れを望む参列者に配慮をすることも出来て、親戚一同も納得いく葬儀になります。


親族が日帰りで参加できる点や、家族葬では省いてしまう一般参列者も拒まないことから、一日葬のスタイルは、これからのお葬式になるかもしれません。

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