おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

警察から死亡連絡が来る

家の電話が鳴ります。受話器から「こちら〇〇警察署です。誰誰が亡くなりました」などの連絡を受けたらどうなさいますか?内容が交通事故死でしたら交通課から、殺人事件でしたら刑事課から、孤独死でしたら生活安全課から連絡が来ます。こんな電話は一生受けたくないと思われるでしょうが、お葬式を請け負うと結構な割合でいらっしゃるのです。


突然の交通事故。夜中の火事。土砂崩れなどの災害死。散歩に出て心不全などの突然死。ニュースになる事件や事故の被害者。そして離れて暮らす両親や兄弟、親戚の孤独死など、考えてみると警察から連絡を受ける身内の死去の可能性は、あり得ることが分かります。


病院に入院中の方や自宅療養中の方の死亡は医師が確認しますが、不審死の場合は警察が検視(けんし)によって死亡確認をします。法律上、人が亡くなると医者か検視官が死亡を確認しなければなりません。検視とは、犯罪の疑いがないかを判断する刑事手続きです。


死去が確認できると次に検案(けんあん)に移ります。これは死因や死亡時刻を医学的に判定することです。病歴や亡くなった状況をふまえての遺体の検査です。目視で判断できないと解剖(かいぼう)になります。死因を検視や検案では判定できない時に行なわれます。


朝起きたら冷たくなっていたなどの自宅での突然死、家に帰ったら首をつっていたなどの自殺、そして臭いで見つかった孤独死の場合は家族全員が警察からの事情聴取を受けます。


警察から「事情聴取を行います」と言われると、犯罪を疑われているのかと心外に思う家族が多いのですが、それだけが目的ではなく「なぜ亡くなったのか」「いつ亡くなったのか」を究明するために必要な聴取なのです。慣れない状況でパニックになりがちですが、事実をできるだけ正確に伝えてください。一般的には以下の確認があるようです。「最近、亡くなった方といつ会いましたか、以前はどれくらいの頻度で連絡をしていましたか」「亡くなった方に持病はありましたか、病院歴や普段飲んでいる薬の種類はわかりますか」「亡くなった方に生命保険の契約はありますか、死亡保険金が下りる場合は誰にいくら払われますか」などです。出来る限り思い出して質問にすべて正確に答えないと、大変なことになります。


検視からご遺体を引き取るまでには、早くても半日以上はかかります。なかには身元確認のためにDNA鑑定が必要になりご遺体を引き取るまでに半月以上を要した家族もいます。通常は捜査が終わり事件性の可能性が無いと確定すると、警察からご遺体を引き取るよう連絡がきます。この時点で葬儀屋へ連絡してください。ご遺体搬送の手配は家族が行います。警察によっては担当者がいくつかの葬儀屋を紹介してくれることもあるので選びます。


突然の身内の死去と言う出来事には家族全員がパニックになります。まして、警察から死亡連絡を受けたときの気持ちは、他人には理解できない程のショックを受けるはずです。ほとんどの方が「なぜ、こんな死に方をするのか」と憤ります。その後「死因をどのように周りに伝えようか」と思うようなります。中には「死因を伝えるのが辛いから、葬式をしたくない」と悲嘆にくれる方もいます。


パニックになって茫然自失になっているご家族に伝えます。
「お葬式は死因を知らせる儀式ではありません。今は、搬送後ご遺体のご安置だけ行います。お葬式の打合せは皆様の気分が優れてから、ゆっくり一緒に考えていきましょう。本日は一旦帰りますので、落ち着かれましたら再度連絡を下さい」

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