来世でも夫婦ですか
ご依頼の電話が鳴りました。
故人の苗字に聞き覚えがありました。
「先月、お世話になりました○○です。父が亡くなりました」
一月前に奥様を亡くし、落胆していた喪主様のお顔を思い出しながら、
病院へ、お迎えの寝台車を走らせました。
やつれてはいましたが、ホッとしているようなお顔のご遺体でした。
葬儀の仕事を続けていると、同じ家のご夫婦を送る事が、結構有ります。
今回のように、ひと月足らずで、続けてお葬式が続くのはあまりありませんが、数年後に同じ家のお葬式が続くことはよくあるのです。
それも、必ず、奥様を見送ったご主人が、
後を追うように旅立つケースです。
逆に、ご主人を天国に送られた奥様方は、皆様、長生きをされます。
男は弱い者です。
つくづく、そう思います。
奥さんに先立たれますと、残された夫はうろたえ、
家のどこになにがあるかが、解からなくなり、
何をしたら良いのかが、考えられなくなります。
私は、必ず、妻より先に、旅立とうと願っています。
納棺をしながら、故人に語りかけました。
「奥様にお会いして、お二人で来世を楽しんでおられますか」
お答えはありませんでしたが、微笑んでいるお顔は、
お二人で極楽を歩んでいるように感じました。
葬儀が無事に済み、疲れた体を布団に入れる前に、
妻に尋ねようと思います。
「来世でも、夫婦ですかね?」
返事が怖くて、まだ聞けません。