おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ダメな葬儀屋と交代する

電話が掛かってきました。「葬儀屋すぐに来てくれ。このダメな葬儀屋と交代してくれ」相手は困惑と戸惑いを含んだ声で告げています。ただ事ではありません。とりあえず伺いました。玄関先にて電話で告げられたダメな葬儀屋が帰るところに出くわしました。知らない顔です。葬儀組合の会合でも見たことのない顔でした。


このお家では過去に葬儀を出した経験がなく、初めてのお葬式依頼でしたので、近頃皆様が良く行うネットの検索をして葬儀屋を選んだそうです。パソコンやスマホに「葬儀」と打ち込むと、検索上位に価格の安さをうたう「葬儀仲介業者」が出てきます。前も話した通りこの会社は葬儀屋紹介業です。全国からお葬式の注文を受けて 各地に登録している葬儀社に仕事を振り分けるだけなのです。ネットの「小さなお葬式」「よりそうお葬式」「イオンのお葬式」などはすべてこのシステムです。格安、定額をうたい文句にする、この葬儀社紹介サイトには欠点があります。それは電話を受けた紹介業者は自社に登録してある葬儀社だけを選んで派遣するという点です。お葬式を頼む喪家様には、どの葬儀屋にするかとの決定権がありません。当然、何十万の買い物をする業者のハズレくじを引く可能性も大いにあるのです。


お話しを聞くとサイトに電話して、だいぶ時間が経ってからやってきた葬儀屋は次々と、とんでもない事を要求し始めたようです。「参加人数を早く決めてください。そうしたら借りるホールを交渉します。どの会場で行うかはその時でないと決められません」「格安セットですから、市役所手続きは全部自分でやってください」とどめは「火葬場の場所を知らないから、喪主さんが道案内で先導してください」これを聞いた時点で堪忍袋の緒が切れた喪主様は冒頭の電話に繫がったのです。


この業者は素人葬儀屋です。葬儀屋は開業するのに何にも資格が要らない職業です。とりあえず葬儀屋紹介サイトに登録して依頼を受け小遣い稼ぎをするのです。定額プランなので内容の説明は必要無いですし、日程を決めるだけで出来るのです。場所の交渉をして当日は派遣スタッフを依頼すれば一人でも十分に対応可能です。


ウェブサイトの紹介業社には、長年の信頼があり、ある程度の顧客がついて集客が出来る老舗葬儀屋はほとんど加入していません。理由は簡単です。この紹介業者は莫大な中間搾取をします。電話を取り次ぐだけで毎月高額の下請け加入料を払わせられるのです。お葬式の総額が安いうえに紹介料を引かれるのですから、人件費と利益を出すために、引き受けた葬儀屋は棺桶等の品は最低価格の商品を使用します。


ネットの葬儀屋紹介サイトを否定はしません。突然のお葬式で頼りになる存在でもあります。わかりやすい説明もあります。何より金額の不安がない定額制と安価な設定に飛びつく方も多いのです。しかし大きなリスクとして、呼ばれた葬儀屋は、お葬式をまともに施工できない人間かもしれないのです。画面のページのお客様アンケートはたぶん創作だと感じます。思うにあの内容は真実の声ではないはずです。


安いお葬式を望むあまり、ネットの宣伝とコマーシャルの心地よい言葉に飛びついて後で後悔する方も多いのです。安い商品は「価格なりのことしかしない」のです。満足感と達成感を感じるまともなお葬式はある程度の金額がかかると思います。

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