おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

家族葬には欠点があるが

少人数のお葬式が大半になりましたが家族だけで行う家族葬には、大きな欠点があります。亡くなった方の人生は家族だけのものではありません。その人がお付き合いしてきた親戚、友人、知人、恩師、仕事仲間、お世話になった方たちなどの多くの人とのつながりで一生を送ってきたのです。お葬式とはこの世を去るにあたりその方たちに受けたご恩をご遺族が故人になりかわりお礼をいう場なのです。そして知らせを受けた方は故人との別れを惜しみご冥福を祈る場所なのです。


家族以外の参列をさせない家族葬はこの大事な連絡を欠いてしまう葬儀なのです。お葬式の重要な目的である社会的な別れをしないのが、家族葬の欠点です。


故人の遺言で家族のみで行ったと弁明なさる方もおられるのですが、親戚にも声をかけないで葬儀を済ました結果、激怒した親戚一同から身内の縁を切られたケースもあります。


ご近所やご友人に内緒で執り行い、「家に帰さない、見送りをさせない、鬼のような子供たちだ」と当分言われて、居づらくなった家族がいます。


仕事や趣味の仲間への連絡をしなかった結果、社会的信用が無くなった家族がいます。


この家族葬のデメリットを解決する方法があります。お葬式前の必要な連絡と葬儀後にきちんと挨拶状を送ることです。家族葬の理由と、今までのお礼を手紙にしたためて皆様に送るのです。家族葬が故人の遺志によるものであることや、なぜ家族葬を選んだのかということについて皆様へ丁寧に説明します。


最初に故人が亡くなったことを伝えます。挨拶状の冒頭に旅立った日時も記します、このとき差出人と故人との関係を記します。声を掛けなかったお詫びの言葉も「故人の遺志により行った」の一文を付けるのが良いでしょう。葬儀済ませた日付も記しておきましょう。


次に香典も供物も供花も受け取りを辞退させてくださいと記します。手紙を送ると「弔問は断られたが、香典だけでも」と香典を送る方もでてきます。小規模な葬儀だったのでお気遣いなくなどと断り、後日弔問に訪れてくれる人にもお花や供物は不要ですと記します。


そして一番大事な内容の故人が生前にお世話になったお礼をします。生前に故人が賜ったご厚誼に対してと、今までの交友関係に感謝し、故人を愛してくれたことにお礼をします。


家族葬の後に出す挨拶状は残された遺族がこれからも人並みに暮らすのに重要な報告です。


先日の出来事です。ご自宅から火葬場にむかう霊柩車が出発しようとしたときに、前からデイサービスの介護車がやってきました。棺桶の中の故人をお迎えに来たのです。事情が解かったときの介護スタッフの驚いた顔が、記憶に残りました。

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