香典返しは何が良いのか
一般参列者が集まるお葬式の受付では、ほとんどの方が「香典辞退」の案内を出します。家族葬はお身内だけの参列ですから、家族や親族の間では香典のやり取りが残っています。身内の絆を確かめるためと金銭的相互扶助の考えで、まだ習慣として香典があるのです。
お通夜や告別式の時に渡す品物が香典返しだと思われている方がおられますが、あれは会葬御礼品という品です。香典返しとは49日目の忌明けに送る御礼の品です。キリスト教ではプロテスタントは召天記念日後、カトリックでは追悼ミサ後に返します。神式の場合は忌明けに相当する五十日祭の後です。
ですが香典返しは必ず行われるわけではありません。地域によっては香典返しの風習がないところもあります。また一家の大黒柱が他界した場合や両親が亡くなり子供達だけとなった場合には、香典返しはしなくても良いと言われます。
香典返しの相場は香典で貰った額の半分の金額相当と言われていますが、親族や身内から貰う香典には結構高額の金額もあり、必ずしも半返しを気に病む必要はありません。忘れがちなのが生花を頂いた場合です。生花は香典と同様に考えお返しのお礼が必要です。
香典返しの品物は「不祝儀は形に残らない物を」という考え方から、俗にいう「消えもの」を贈るのが一般的です。お茶やお菓子などの食品です。食品でも肉や魚と酒類は控えます。タオルや石けん洗剤なども消耗品として良く選ばれます。
香典返しの定番のお茶は仏教と深い関係があります。日本は中国から僧侶を招き仏教を教わりました。その僧侶が万病の薬として持ってきたのがお茶でした。僧侶達は健康を守ってくれる感謝の気持ちとしてお茶を仏壇にお供えしていたのです。
一時カタログギフトが人気を集めましたが現在はあまり伸びていません。カタログギフトにはデメリットもあります。送付先がきちんと選んで品物を受け取ってくれたかが分からないとか、カタログ内の商品が在庫切れになる心配とか、そもそも希望するようなアイテムがほとんど見つからないなどです。
一時、商品券のお返しもブームになりましたが、はっきり金額が分かるので廃れました。
故人の遺志で香典返しをせずに、団体へ寄付をしますという方もいらっしゃいます。お返しの煩わしさを避けたのでしょうが、香典を出した側の人間としては、お葬式に役立てないなら最初から受け取らなければよいのにと複雑な気持ちになる様です。
一般的に香典返しをいただいた際には返事をしない風習があります。香典返しの礼状を送ると不祝儀が繰り返されるので失礼に当たるとされていたのです。基本的にはお礼状は不要ですが、送り主はちゃんと品物が届いているのか不安になります。そのため香典返しを受け取った方は電話やメール、またはラインでも良いので、挨拶をされることをおすすめします。お見舞いの言葉を主にして、ついでに届いたことを伝えるのがマナーです。
突然の出来事に困惑する遺族を助けるため生まれた香典の考えと、故人との縁を感謝する香典返しの風習は、絆を大事にする日本人の精神だと思います。