おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お悔みをスマートに言う

お葬式の開始時間が近づいてくると参列者が次々と集まり始めます。受付でお悔やみを伝えているのですが、モゴモゴと言っているだけではっきりと聞こえません。喪主様やご家族へのご挨拶も内容が伝わってきません。お悔やみをはっきり伝えることはとても難しく、スマートに出来ない方が意外と多いのです。


頭の中ではこう言おうと文面が出来ているのに、面と向かうとなぜかスムーズに口から出てこないのがお悔やみのご挨拶です。口ごもる原因の一つが、忌み言葉を使わないという制約です。「重ね重ね」「たびたび」「いろいろ」などは不幸の繰り返しを思わせるので使いません。「引き続き」とか「なおまた」も避けたい言葉です。死を直接に連想させる言葉の 「死亡」や「事故死」もマナー違反です。お悔やみで故人の死因を尋ねるのも失礼に当たります。「がんばってください」の言葉はお葬式でのお悔やみの言葉としては不向きです。


一番簡単なのが「このたびは御愁傷様でした」と述べる言い方です。香典を受付に出すならば「故人のご霊前にお供え下さい」とひと言添えます。


喪主様にしっかりご挨拶を伝えるならば
「このたびは突然のことで驚いております。皆様のお気持ちを思うと言葉もございません。心よりお悔やみを申し上げます」


「このたびの訃報に際しては言葉もありません。故人には生前本当にお世話になりました。
これから少しずつ恩返しをしようと思っていた矢先でしたが、こんなに早く逝かれるとは残念でなりません」


「このたびは突然のことでまだ信じられません。心よりお悔やみを申し上げます。本日は感謝の気持ちをこめて、ご焼香させて頂きます」


病死の場合は
「先日お目にかかったおりには、あれほどお元気でいらっしゃいましたのに、急にお亡くなりになられて、残念でなりません。謹んでお悔やみ申し上げます」


「お見舞いにも伺えないうちにお亡くなりになられて、誠に心残りでございます」


若くして逝去された場合は
「将来をとても期待されていた方でしたのに、本当に残念でなりません。突然のことでまだ信じられません。お辛いお気持ちを察しております。何か私にできることがあればお手伝いいたしますので、おっしゃってください」


などと自分の気持ちを一言加えて伝えることで、お悔やみの気持ちがしっかりと伝わります。通夜式や告別式の開式直前であれば、式の進行を妨げてしまいますから、会食の時間などにずらす配慮も必要です。


ドラマで、恩師のお葬式に集まった生徒たちが、ご家族に言葉を発せず、お互い見詰め合ったまま、涙だけが頬を伝わるシーンがありました。
本当の悲しみを伝えるには、お悔やみの言葉はいらないようです。

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