おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お子様の参列は歓迎です

ほとんどのお葬式が家族葬になりました。それに応じて増えてきていると感じる事があります。赤ちゃんや小さいお子様を連れて参列する「子連れでお葬式」のご家族です。ひと昔前までは、小さな子供がいるなら「最期のお別れを遠慮するか、あきらめて」と言われて悲しい気持ちでやむなく欠席された方もおられたはずです。


お葬式の参列にあたり赤ちゃんや小さい子供を連れて行くかどうかは結構悩む問題です。一般葬の弔問でしたら、ほとんどの方が自宅に置いていくか参列を諦めます。読経の中、大声で泣く赤ちゃんや長時間じっとしていることが難しいお子様の場合、弔問に連れて行くのは「葬式のマナー違反」に当たると言われた時代もありました。


お世話になったお爺ちゃんやお婆ちゃんを送る家族葬です。当然、赤ちゃんやお子様の体調も考慮をしますが、出来るなら参列させて、故人にお顔を見せて、お別れを伝えるのも供養だと思います。ですが、乳幼児を参列させるには配慮も必要です。


大人でもお葬式の会場は異様な雰囲気で居心地がよくありません。赤ちゃんにとって会場内はお線香の匂いで、臭く我慢が出来ないのです。周りの大人は構ってくれないし、じっとしているだけでつまんないし、嫌な雰囲気を感じて騒いだり泣いたりするは当然なのです。


だからと言って、読経の間中、泣き続ける赤ちゃんや焼香の列の中を走り回る子供を、そのままで式場内に居させるのはやはりマナー違反です。焼香の順番までは我慢しようと考えるお母さんが多いのですが、やはり周りに迷惑をかけています。読経中や焼香中に赤ちゃんが泣きだしたら迷わず退席してください。退席と言ってもそのまま帰るのではなく、一旦式場を出て受付前やトイレ前などで、式場に声が響かない場所で落ち着くまでお子様の相手をしてください。あやしているうちに泣き止んだら、あらためて席に戻れば良いのです。


焼香を終えていないタイミングで、お子様がぐずりだして退席しても葬儀屋は心得ています。貴方がご家族なら遺族焼香の最後に、一般参加者なら一般焼香の最後の順番で声を掛けて案内します。又、最初にスタッフに「子供が騒ぎ出したらすぐに退席したいので、一番うしろの席でいいですか」と伝えてくれるのも助かります。


最近の葬儀会館は、トイレ内に赤ちゃんを座らせるスペースやおむつ交換台を設置しています。授乳にお困りでしたら空き部屋へ案内します。ベビーカーの持ち込みは遠慮される方もおられますが、邪魔にならない場所に置くように手配します。事前に、会館内に乳児用の施設の有無と利用可能かなども確認しておくと安心です。


御自宅でお葬式をあげていた昔は、親戚一同に必ず乳児や小さいお子様がいました。その頃の言葉に、お葬式の最中に参列させた赤ちゃんや小さな子供が騒ぐことを「孫の祭り」と呼んでいました。大勢の孫が参列するのは、故人が長生きをした証拠だと喜ばしく捉えたのです。


赤ちゃんを連れての参列は遠慮される事ではありません。皆様への配慮を忘れずに行動すれば故人も喜んでいます。優しい葬儀屋は「子連れ参列」を歓迎いたします。

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