おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

死後の手続きは辛い役目

一人の人間が亡くなると、その瞬間から様々な手続きを始める必要に迫られます。亡くなった直後にまず死亡診断書又は死体検案書を受け取ります。そして死亡届の記入から提出を経て火葬許可証の受け取りと進みます。死亡診断書は以後の手続きの度に必要になるので、必ず5枚以上のコピーを取ることを忘れないでください。


お葬式を済ませた後も怒涛のように次々と手続きが押し寄せます。急がなければならないのが年金受給停止手続きです。法律では国民年金の場合は死亡後14日以内、厚生年金の場合は死亡後10日以内の届け出と決められています。手続きを怠ると不正支給を疑われ、万が一の場合は手が後ろに回るかもしれません。近頃はマイナンバーが収録されているので、死亡届を提出することで、年金事務所に情報が共有され「手続き不要です」と言われる場合もありますが、皆様の話を聞くと未支給年金の届け出の為に、やはり年金事務所又は年金相談センターに年金受給権者死亡届と年金証書そして死亡の事実を明らかにできる死亡診断書のコピーを持ってきてくれと言われるそうです。マイナンバーの紐づけはまだ不完全なようです。


健康保険の資格喪失届や介護保険資格喪失届も急ぎます。国民健康保険は死亡後14日以内、会社の健康保険の場合は死亡後5日以内の手続きになります。故人が65歳以上又は40歳以上65歳未満で要介護・要支援認定を受けていた場合には介護保険の資格喪失の手続きが必要です。故人の住民票のある市区町村役場に介護保険の資格喪失届を14日以内に出さなくてはいけません。


亡くなった人が会社健康保険の被保険者の場合は「埋葬料」を請求できます。金額は5万円です。国民健康保険か後期高齢者医療保険に加入していた場合は市区町村へ「葬祭費」の請求ができます。葬祭費の金額は1~7万円です。金額は家族の状況や市町村の自治体によって異なります。これは申請しないと貰えません。


故人が世帯主だった場合は残された家人が新たに世帯主になる場合に市区町村役場で住民票の「世帯主変更届」を提出します。死亡届を提出すると故人の住民登録は自動で抹消されるので抹消届は不要ですが、新たな世帯主の登録が必要です。この手続きは死亡後14日以内です。遅れると5万円以下の過料が請求されます。


高額医療費の還付申請所得税の準確定申告や納税や固定資産税の納税は申告期限に遅れると、延滞税や無申告加算税などのペナルティで税負担が大きくなってしまうので、可能な限り早く準備をします。相続税の申告と納税は10カ月以内です。遺産総額が相続税の「基礎控除」を超える場合は、相続税の申告と納税をしなければなりません。基礎控除は「3000万円+法定相続人数×600万円」です。


夫を送り出した奥様が思わず嘆きました。
「夫のいない新しい人生を歩んでいくためには必要な事だと思いますが、喪失感でボロボロの精神に、何かにつけて死亡診断書のコピーとか住民票の除票などの、夫が亡くなったという証明書を求められるのは辛いのです。窓口で手続きをする度に「夫が亡くなりまして」と何度も言わなければいけないのは勘弁してほしいです。いつまでも続く役所手続きは地獄の時間で出来るだけ早く解放されたいのです」

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