おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お別れの弔辞に感動する

先日行われた一般葬で久しぶりに弔辞が読まれました。長年にわたり親友でしたと紹介された初老の方が、祭壇に向かい故人に切々と語りかけました。中学から高校と同窓で大学は違いましたが親交は続き、家庭を持ってからも家族同士でお付き合いをされたそうです。締めの言葉で「三途の河の畔で出迎えてくれ、来世で又会おう」と結ばれました。会場の弔問客の皆様全員が感動して聞きほれていました。


弔辞は故人と親交の深かった人が霊前に捧げる「故人を弔う言葉」です。弔うと同時に送る言葉にもなります。親交の深い友人等が喪家様から依頼されて行います。もし貴方が頼まれたら心をこめて準備しましょう。内容をキッチリとした固めの文章にするべきと思いがちですが、無理に難しい言葉を使う必要はありません。ご遺族や参列者に理解しやすい内容を選び、生前の思い出や故人の人柄を偲ばせるエピソードを自分なりの言葉でまとめるようにして仕上げてください。


文面の長さはゆっくり読んで3分程度が適切です。長くても5分以内にまとめます。文字量でいうと800~1000文字が目安です。文章が出来たら巻紙に薄墨の毛筆でしたためて奉書紙に包むのが正式な作法です。近頃は便箋にペンで記し白い封筒に入れる形でもかまいません。


弔辞を読む際は祭壇前に進み、お坊様とご遺族に一礼してからご遺影に向かって一礼します。巻紙を広げ故人に語りかけるように、心を込めて静かに読み進めてください。どうしても緊張で早口や棒読みになりかねないので注意することも必要です。


結婚式のお祝いの言葉を便箋に書いて発表した記憶のある方は読み終わって自分の懐に仕舞う勘違いを起こすことが多いのですが、弔辞は故人に捧げる品になります。読み終わったら必ず祭壇に供えてください。出棺時に棺桶に入れる地域もありますが、正式な形ではお葬式の後でご遺族の手に渡します。


最も有名な弔辞と言っても過言ではないのが、漫画家の赤塚不二夫さんのご葬儀でタレントのタモリさんが読まれた弔辞です。およそ8分間にも及ぶ素晴らしい内容の弔辞は、終了後に読まれていた巻紙がすべて白紙だったという事で驚きと共に知れ渡りました。


「私はあなたに生前お世話になりながら、一言もお礼を言ったことがありません。それは肉親以上の関係であるあなたとの間に、お礼を言う時に漂う他人行儀な雰囲気がたまらなかったのです。あなたも同じ考えだということを、他人を通じて知りました。しかし今、お礼を言わさしていただきます。赤塚先生本当にお世話になりました。ありがとうございました。私もあなたの数多くの作品のひとつです」


漫画作品のひとつですとのフレーズが、タモリさんと赤塚さんの関係性とリスペクトの気持ちを表したと評判になりました。白紙を見ながら故人に思い出話を語り、お別れを伝えるなどの技術は、なかなか出来る事ではないと評判になりました。


最近は簡素化されたお葬式が増えて、葬儀屋でも弔辞を聞く機会も減っています。
貴方が頼まれた際は、せっかくの機会ですから素敵な弔辞でお別れを伝えて下さい。

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