おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

ハッピーエンドな死に方

自宅のお部屋で在宅介護を受けている高齢者を見送られたご家族から、お葬式の連絡を受けました。直ぐに準備をして伺いました。介護ベッドの上のお爺ちゃんに対面します。第一印象は「苦しみの無い、良いお顔で旅立たれた仏様だなあ」でした。かかり付け医の死亡確認は終わっていましたので、御着替えを始めました。看護師さんからもよく聞きますが、人間は臨終のときに、体内に溜まっていた便を身体から出します。新人の看護師は「エンゼルケアの最初の作業は新しいオムツに履き替えさせる事」と申し送りで教わるそうです。病院では綺麗な状態になっていますが、在宅ではお身体が汚れている場合も多く、ご遺体の確認は必ずオムツの点検から始めます。覚悟して紙オムツを点検します。少しも汚れていません。又、自宅のベッドでの介護生活が長くなると、どうしても特有の匂いと言うか加齢臭が気になるのですがそれもありません。一言で言うと、とても綺麗なお身体の仏様なのです。羨ましいと感じるほどの旅立ちに思えました。


最期を迎えた時に病院に入院していると簡単には死ねません。担当のお医者様は臨終まで延命治療を行います。言い方は良くないのですが、簡単に死なせないのは病院を儲けさせる目的もあります。当然、家族の金銭的負担も多くなります。延命治療という名目で身体のあちこちに穴が開けられます。喉に穴を開けた人工呼吸器や、お腹に穴を開け流動食を入れる「胃ろう」処置や、皮下がブヨブヨになるまでの点滴注入が行なわれます。病院では死なせない様々な治療が人体実験のように施されるのです。死を目前とした患者は息を引き取るまでベッドの上で苦しむのです。


「とても穏やかな旅立ちでした」ご家族から最後の様子が語られます。亡くなる一週間ほど前から食べ物を一切取らなくなったそうです。三日前からはお水も飲まなくなりました。かかり付け医は点滴を勧めましたが、医療経験のある家族は断りました。1日前から下顎呼吸の状態が始まりました。血圧も下がり脈拍もほとんど触れない状況でした。間もなく臨終かと家族がベッド脇に集まります。喘いでいる故人に周りは身を乗り出し口々に呼びます。「お爺ちゃん解かりますか」「しっかりして」「頑張って」その時、横で見ていたお婆ちゃんが故人の手をそっと握り優しい声で言いました。「もういいよ、頑張らなくていいよ」大きく吸い込んだ息は二度と吐き出されませんでした。微笑みの出ているお顔が作られた理由が解りました。


食べ物が喉を通らなくなり、水が飲めなくなったら無理強いをしない方が良いのです。枯れ木のように衰えていけば最後の便も尿も出ずに、綺麗な身体で旅立ち、穏やかな最期を迎えるのです。お医者様は「死を受け入れる考えは無い、最後まであきらめずに頑張るのが最善の治療」と言いはります。消化機能が働かない身体に無理やり流し込まれた流動食はすべて血便になって肛門から流れ出ます。吸収が出来ない血管に差し込まれた点滴の水分は皮下溜まり栄養分はそのまま尿になります。


人は必ず最期を迎えます。その時は静かに受け入れたほうが安らかに死ねると思います。医学の発展と同時に様々な延命治療が試され、その結果、病院では眠るように安らかに亡くなる人がいなくなりました。死がバッドエンドと言われるのです。


人生の最期を幸せな良い死に方で迎えてください。ハッピーエンドにするために。

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