家族葬にむいてない仏様
コロナ過という厄災も後押しをした結果、お葬式の形が家族葬と呼ぶスタイルに替わりました。友人、ご近所、会社関係などの多数の弔問客を招くことを省略して、家族と親戚だけで送る内容が一般的になり始めています。超高齢化と多死社会を進み始めたこの国です。お葬式の簡素化と少人数化はこれからも増加していくと思います。
2016年度に公正取引委員会が出した「葬儀に関する実態調査書」では一般葬が63.0%と最も多く,次いで家族葬が28.4%、直葬が5.5%と続きました。しかし昨年度の調査では、家族葬が51.1%と最も多くなり、次いで直葬が26.2%とお葬式の変化が顕著に表れます。
家族葬の内容に厳密な定義はありません。言葉の意味としては、家族や親戚だけが参列をするお葬式ということになります。同じような意味合いで密葬という言葉も使われますが、少し違うように感じます。密葬は秘密という言葉が連想されるので、有名人の死去をあえて隠す意味になります。しかし家族葬と大きく違うのは、故人の旅立ちと今までの感謝を表す「お別れ会」を行います。後日に連絡が必要な関係者に必ず知らせるのです。
ほとんどの皆様が希望する家族葬ですが、打合せをしていると家族葬にむいている故人と、むいていない故人がいるのに気がつきます。家族葬が不向きな故人は、生前の交友関係がとても広かった人です。このような故人のお葬式を家族葬で行うと、その後、ほとんどのご遺族に後悔の念が残ってしまうのを経験しています。実際、生前の交友関係が広かった方のお葬式を家族葬で済ませた後で、必ずと言っていいほど、死去を知ったたくさんの方が確認の電話連絡をかけてくるとか、ご自宅に弔問に来られてご遺族がその対応に追われる現実を見てきました。中には、お葬式に参列できなかったご近所の人々が、葬儀終了後の慌ただしい時に、次々とご自宅へお参りの為に上がり込んだこともあります。「どうしてもお線香をあげたい」と訪問が続くと、ご家族は数日その対応に追われてしまうのです。
先日は、個人でお仕事をされていた方のお葬式を家族葬で行ったところ、お葬式を終えてすぐに会社関係や取引先関係の皆様が「お線香をあげさせてください」と連日自宅に訪問してきました。名義変更などの手続きや片付けで大変な時に、家族は次々と来る来客の対応に追われたのです。その大変さから「これなら家族葬ではなく他の方にも声をかけてお別れをしてもらう一般のお葬式にすれば良かった」と後悔したご遺族もおられます。
故人様が現役で活躍されていたのでこのような事になってしまいましたが、すでに現役から退いている方でも家族のみの家族葬にむかない故人もおられます。例えば教職などの学校関係者の場合には、多くの教え子たちがお別れをしたいと願っています。退職されていても会社内の結びつきが強い職場などでは、慕っていた後輩や懇意にしていた取引先の方などが、どうしても最期にお別れをしたいと思う方が多数いらっしゃるのです。
又、親戚の中には、お葬式に呼ばれなかったことで「喪家家族から軽く見られている」という印象を持たれてしまい、その後の関係がうまくいかなくなった例も経験しています。後日、親戚の皆様から「自分も最期のお別れをしたかった」と次々と言われ、家族葬にしたことを後悔したご遺族もいました。
家族葬にむかない事例を参考にした上で、どのようなお葬式を行うのが自分達にとって最も良いのかを考えてみてください。