おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お香典は結構難しいです

家族葬が多くなりました。それでも、ご近所の皆様方や故人と親しくしていたご友人方が、どうしてもと参列されるお葬式は多く見受けます。そしてその際にお香典を持参されます。香典辞退の家族葬と決めていても、嫁いだ娘家族や親戚関係などはお香典を持ち寄ります。少しでも、お葬式費用に充てて欲しいとの気持ちの表れです。喪主様もありがたく受け取ります。遺族としては他の参列者のお香典は遠慮しようと思っていますが、式場までこられて「これはほんの気持ちですから」と出されるとなかなか「それでもお断りします」とは言いにくいと感じます。葬儀屋に相談された場合は「せっかく準備されたのですから一旦ありがたく受け取り、後日お返しを考えては如何でしょうか」と解決策をお伝えします。


会館事務所の電話にお葬式が始まる前に良くかかる質問があります。それは「お香典はお通夜と告別式のどちらに持参するのが良いですか」という内容です。答えは「どちらでも良いです。お通夜で持参した場合は、翌日の受付で『昨日通夜に参列させていただきましたので、名前だけ書かせていただきます』と伝えてください」と話します。


近年では、ほとんどの参列者がお通夜だけに参列します。日中行なわれる告別式には仕事や家事で出にくいこともあります。当然、お香典もお通夜に持参されます。ですが、高齢の方の中には「お通夜の時の香典は非常識でやってはいけない」と強く主張する方もおられます。お葬式は突然の出来事です。準備が出来ていないお通夜には平服で駆けつけ、当然お香典の用意も出来ていないので翌日の告別式に持っていくのが常識だと考えるからです。お通夜にお香典を持参するのは、いかにも死去を待ちわびて、事前に香典袋を用意していたと誤解されかねないと言い張る意見もまだあるのです。


お香典の表書きは薄墨で書くのが常識だと言う方もいます。しかしこの風習を知っている人は少なくなりました。受付で見ていても、薄墨で書いてある袋は少ないです。そもそも薄墨で書く風習は「悲しみのあまり涙で墨が滲んでしまいました」「あまりに突然で硯の上で墨を濃くすりきれないままで書いてきました」という思いからきています。今では、硯で墨をすり墨汁を作る作業自体を知らない人が増え、ほぼ無くなった風習になりました。


表書きの差出人の名前は香典袋の下半分に書いてください。個人で香典を出すときには、香典袋の中央にフルネームで書くようにします。姓だけの方を良く見受けますが、これは、本来は非常識な記入の仕方です。夫婦で香典を出す時は一般的には夫の名前を書きますが、夫婦で親しい関係の場合には、中央に夫の名前を書いて左に妻の名を書き添えます。奥様だけが故人との関係がある場合は夫の名は省き自身の名前のみで差し出します。


上司の代理で出席する時は、本来の出席者名の左下に小さい文字で「代」と書きます。芳名帳には、香典袋の名前と住所を記入し代理で参列したことが分かるように持参人の名前と「代」を小さく記帳します。2人で香典を出す場合には中央に2人の名前を書きます。大人数の場合は「友人一同」などを表書きにして内袋に全員の名前を記入しておきます。役職や上下関係がある場合には、格の高い人から順に右側から書きます。会社名義で香典を出す場合は中央に社長や代表者名を書いて、名前の右側に会社名を記入するのが本来の書き方です。


「〇〇一同」の香典袋の内袋には「気持ちですのでお返しは不要です」と書き添えておくが香典マナーの一つです。そして別紙に全員の名前と住所を記入し中袋に入れておきます。喪家様がお返しの代わりに送付する満中陰の挨拶状送りに、ご遺族は大変助かるのです。

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