おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

地域で違うお葬式の風習

仏教には13宗56派あります。また神道やキリスト教などの宗教が混在している我が国です。江戸時代の幕藩体制では266藩がそれぞれに統治を行っていました。そして南北に長く山岳地域と沿岸地域や農村部と都市部と環境も変わります。こうした宗教、政治、地理的環境などから、お葬式というセレモニーは地域ごとで異なる風習が生まれました。


お通夜や告別式に持参する香典袋には「御霊前」と書くのが一般的です。しかし仏教の浄土真宗では「ご仏前」と書きます。浄土真宗では亡くなったと同時に阿弥陀仏によって極楽浄土に導かれ、仏になれると考えられているからです。福井県、富山県、石川県、島根県、佐賀県はほとんどが浄土真宗のお寺ですから注意が必要です。お葬式が仏式で行なうのが解かっているなら「御香典」とすると、宗派に関係なく使えます。


関東から以北は友引を火葬場の休業日にしています。友引は「故人が友を連れていく」と誤解されお葬式をしません。しかし、六曜の一つである友引は中国の占いの考え方ですから仏教の法事とは関係がありません。あくまでも迷信です。関西から西は友引でも葬儀を行います。ですが信じる方も多いので身代わりとして人形を入れます。ちなみに友引以外でも、秋田県は丑の日、和歌山県は三隣亡、島根県は大安を避けてお葬式の日を決めます。


過去のブログでも触れましたが、前火葬と後火葬と言う火葬炉に入れるタイミングも違う地域があります。全国的には後火葬が多いですが、山地や雪国で移動が困難であるとか、温暖な地域でご遺体が傷みやすいなどの事情から前火葬が通常で行われます。北海道や東北の各県、島根県、九州の各県、沖縄県などが前火葬の風習を持つ地域です。


お通夜の呼び方も千葉県、鳥取県、島根県、徳島県では夜伽(よとぎ)と言い変えます。夜通し棺桶の故人に付き添うという意味です。全国でもお通夜の後に家族や親族が棺桶を守りお線香を絶やさない風習を夜伽と呼ぶ地域は多いです。香典の他に、岩手県は「御夜食料」、千葉県の「夜伽見舞い」、愛知県や三重県の「お淋し見舞い」、山口県、福岡県、鹿児島県の「通夜見舞い」と呼ばれます。香典の他に、缶詰やお菓子そしてお酒などの供物を皆様が持ち寄る地域もあります。


お通夜後に会食をする「通夜振る舞い」に関東以北は一般会葬者も招待します。喪主様から勧められたら一口でも箸をつけるのがマナーと言われています。関西地方から西では、一般会葬者は通夜の食事には出席しないでそのまま帰宅するのが風習です。


焼香の際にお盆に100~500円程の小銭をのせる焼香銭(しょうこうせん)という慣習がある地域もあります。昔は会葬者がお香を持参していた名残と言われます。焼香をする香炉の脇に小さいお盆を置きます。新潟県、富山県、愛知県、兵庫県、広島県で行ないます。


北海道では受付で香典袋の中身を確認して各自に領収書を発行します。参列者が記入する芳名帳はありません。霊柩車は使わず棺が入るバスで一緒に火葬場に行くことが多いです。


このようにお通夜やお葬式は、故人が生活していた地域の宗教観とか価値観、そして地域の時性などに基づいた風習の違いがあります。転勤や結婚などで新しい土地で生活する場合は、その土地における風習の違いに注意してお葬式に参列してください。

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