おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

墓を持たない人が増える

お寺の境内からお墓が無くなってきています。檀家を止めて先祖代々のお墓を「墓じまい」される方も多くなってきました。公営の管理墓地の募集広告も見なくなりました。これ以上の敷地が開拓できなくなり空いている墓地が無いそうです。遺骨になってからの終生の住み家である「墓石を立てたお墓」を整地して増やすことが難しくなってきています。


代わりに出てきたのが自然葬という考え方です。自然葬とは、遺骨を海や山の自然に還す弔い方のことをいいます。これは「人間も自然の中の生き物だから自然の循環の中に回帰しよう」という考えに由来する葬送方法です。墓石や人工物を立てたり、墓地を作るために木々を伐採したりする必要がないことが特徴です。自然に優しい葬送方法と言えます。


自然葬には散骨する方法と樹木に脇に埋葬する方法があります。散骨はご遺灰を「まく」行為であり、埋葬は「埋める」行為です。埋葬は法律の定めがあり、許可を受けた墓地のみと決められています。墓地以外の場所に埋葬した場合は「墓地、埋葬等に関する法律」に違反します。いくら愛する人の遺骨でも勝手に自宅の庭に埋めてしまうと捕まります。


散骨については過去ブログ21年11月の「骨は海や山に」で綴りましたので今回は樹木葬について考えてみようと思います。樹木葬には、一般的に次の3種類があります。合祀(ごうし)型と呼ぶシンボルとなる樹の下に他の人の遺骨と一緒に埋葬する方法です。集合型はシンボルツリーの下に設けられた石室の中に袋や骨壷に入れた状態で埋葬する共同埋葬型です。家族型は墓石と同じように樹木を植えた個別の墓標がありそこに埋葬する個別埋葬型です。樹木葬の考えは人によって違うので、どのタイプで葬送するかを考えてください。


樹木葬の場合は墓石を購入する必要がないので費用が抑えられます。一般的に墓石を建てるには158万円の平均価格がかかります。樹木葬はその半分以下の69万円で可能です。


樹木葬のメリットは、故人が自然回帰を望んでいる希望を叶えられる他に、基本的に一代限りの永代供養であるので承継者の手続きが必要ありません。墓地を購入する一般のお墓よりも子供たちに負担をかけずに費用も軽減できます。


デメリットは遺骨を土に直接埋葬する形式の場合は後で取り出すことができなくなります。現地を見学して決定する方が多いのですが、夏の季節に見学して気に入り購入した後、冬に納骨しようとしたら積雪の多さに驚き、納骨を諦めたと言う方もおりました。樹木葬の立地は景観重視ですから、それ以外は不便なる事があります。当然、お墓参りなどの供養の方法についても考える必要があります。樹木葬の場合は郊外の山の中である地区が多く、一般的なお墓参りの服装や荷物では辿り着けない場合もあります。場所によっては歩きやすい靴や服装の支度が必要になります。又火事を防ぐためにお線香を禁止している施設も多く、環境保護のために食べ物の供養は絶対に禁止です。


自然葬の中の樹木葬を希望される場合には、その意思を生前に家族に伝えておくことが大切です。事前に樹木葬の種類や細かい内容そして注意事項を知っておくことも必要です。


お墓を持たない人はこれからも増えてきます。火葬場で収骨した骨箱の前で悩む前に、ご自身やご家族のために、どのような遺骨の供養が良いのかを考えてみましょう。

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