おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お葬式トラブルあれこれ

受注したお葬式が無事に終わると心の底から安心します。冠婚葬祭は何事もなく済んで当たり前の世界です。ところが仏教宗派の違いや、地域による異なる風習、お葬式特有のマナーや決まりごと、そして各人の考え方の違いもあり、結構事件簿に記載したくなるような出来事も多いのです。故人との別れを惜しみ、しめやかに執り行われるお葬式ですが、慣れない場で突拍子ない行動をしてしまう参加者も見受けます。


参列者のトラブルを発表する前に、お寺のお坊様にもいろいろと困らせられる出来事が起こります。特にとても迷惑するのが遅刻です。葬儀会館に到着後、お布施の受け渡しとか、儀式用の袈裟に着替えますから、少なくとも10分前にはお顔を見せて欲しいとお願いしていますが、ギリギリに飛び込むお坊様も結構おられます。5分前になっても車が来ない場合などは確認の電話をかけてみます。大概「もう出ています」などの返事が返ってきますが、蕎麦屋の出前のように忘れていたか時間を間違えていたかのどちらかです。「何分程遅刻します」と言っていただいた方がよほどありがたいのです。お坊様1人の予定が蓋を開けてみたら2人や3人と連れ立って来たなども困りものです。急遽、追加の椅子を用意して鳴り物の木魚や鉢を用意します。お布施の金額も変わって来るので喪主様も迷惑です。それでなくとも解かりにくい御経です。声が小さくて聞こえないとか、途中で無言になるとか、まだ焼香列が長々続いているのに御経を止めてしまい立ち上がるなどが起こります。一回だけでしたが高齢のお坊様が読経の最中に倒れてしまい、救急車を手配したことがありました。連絡を受けたお弟子さんが駆けつけて、なんとか御経は続けられました。曹洞宗や臨済宗の禅宗のお坊様の読経の時は皆様注意していてください。参列者からよく聞くのが「読経の途中でお坊様が急に「カッ―」と叫んだ。驚いてビクッとなった」です。


参列者の非常識な服装や行動そして雑談なども困ることがあります。女性の喪服のワンピースから除く生足とか真っ赤なペディキュアが見える足元にもビックリさせられます。男性の黒以外の靴下や喪服から覗く派手なネクタイピンや色付きのシャツなども疑問を感じます。毛皮のストールを身につけた女性や、古い葬祭用の革靴を履いてきて、踵が壊れてしまい、床に黒い足跡を点々とつけて回る男性なども迷惑です。


焼香机の抹香入れと消し炭の入った香炉を間違え、燃えている炭に指を近づけて、とんでもない大声を出したので、周りがビックリたことがあります。読経の時に子供が走り回って供花のスタンドに衝突、燃えているローソクが倒れて祭壇に火がついたこともあります。


受付で出された香典袋に何もお金が入っていないのが見つかったことがあります。中袋にお名前が記入されていましたので一応連絡を取ったところ「金を入れ忘れた」と返事があり「香典泥棒騒ぎ」と大ごとにならずに解決しました。


親族控室で、他の親戚が多くいるのに残された奥様が自分の親戚と残った財産について話し始めて、トラブルが起きそうになったこともあります。火葬場の控室で挨拶に立った喪主様が「焼きあがるまでしばらくお食事を楽しんでください」と発言した時はビックリしました。


お葬式は、人によっては人生で一回か二回しかない経験です。慣れない場で戸惑うことも多くあると思います。地域によっても様々な風習の違いがあります。
喪主もお坊様も参列者も、全員の行動が無事に終わって、あたりまえの世界なのです。

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