費用と広告の落とし穴は
テレビを見ていると頻繁に入るコマーシャルがあります。「お葬式」の宣伝広告です。インターネットで「お葬式」を検索すると必ず上位に並ぶのが「葬儀屋の仲介業者」です。どの広告の内容も驚くほど低価格の金額を提示しています。今まで、お葬式を経験していない人に「その金額でお葬式が出来る」と思い込ませるように宣伝されています。はっきり言って「これは詐欺に等しい行為」です。
一回でもお葬式を経験した方や、過去に喪主を務めた経験のある方なら「実際のお葬式には広告に提示されている金額以外にも多くの費用がかかる」と知っています。ところが初めてお葬式をする方にとっては、この広告は「低価格でそれなりのお葬式が出来る」と納得してしまうのです。
打ち出している安価な金額は火葬のみ(直葬)の料金です。悪い言い方をすればゴミ処理と同じで何もせずに焼くだけです。ほとんどの方が想像している、祭壇の前にお花で囲まれた棺桶を置いて、お坊様を呼んで家族で焼香をしながら故人を想い集う家族葬とは、まったく別のスタイルです。家族葬と言う言葉の定義が曖昧なことを逆手にとった業者は「家族葬が〇〇万円」と広告しています。この言葉を鵜呑みにして、故人を想うお葬式を手頃な価格でおこなえると誤解しないでください。
又「安価な火葬式」と出ている宣伝でも見えている金額だけではとても足りません。よく見ると大きな文字で書かれた金額の下に小さく細い文字で「別途料金が掛かります」と書かれています。悪質な場合には、この注意書きすら表記されていません。
亡骸を焼くのには火葬料がかかります。この金額は地域によって異なるため提示されません。火葬場は自治体の公共施設ですから、その土地に故人の住民票があれば1万円前後ですが、市外になると10万円に跳ね上がる所もあります。東京は民営が多く中には「貴賓棺」と呼ぶ35万円の火葬炉があります。近頃は混雑もひどく1週間は待たされます。遺体の傷みを防ぐために毎日ドライアイスが取り換えられ1日2万円の追加料金がかかります。ネットで紹介される悪徳葬儀屋になかには「火葬炉の予約がなかなか取れない」と言い張り平気で10日程火葬を伸ばし追加料金で儲けるようです。もちろんこの金額は提示の価格には入っていません。終わってから追加料として請求されます。この他にも火葬場関係の費用では、控室やそこでの飲食費用、収骨手続きや骨壺などの金額が必要になることもあります。広告やホームページに出ている価格で、直葬のお葬式のすべてが賄えるわけではないのです。
最低限(火葬のみ)の生活を保障する生活保護法の葬祭費は約20万円です。火葬する際に必要となる最小限の物品、経費負担の少ない日程、最低限の人件費を合計した上限金額です。少ない日程とは亡くなって2日後に火葬できた場合のことです。火葬式でこの「最低限の金額」以下の数字を掲げている場合は、必ず追加料金が発生するのを認識してください。「安すぎる葬儀料金」には注意が必要なのです。
故人が火葬のみの直葬を希望していて、家族も願いを叶えたいという要望は多くなっています。大切なのは最終的にどのくらいの金額が必要なのかを、調べておいて葬儀屋と納得がいくまで話し合うことが、後悔をしないお葬式には必要なのです。