おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お一人様の旅立ちの方法

家族や親戚などの身寄りのいない「お一人様」と呼ばれる人が増えています。結婚にご縁がなく独身で過ごされたとか、結婚していても子供に恵まれず配偶者も亡くなってしまい、親戚関係も交流が無いなど、いろいろなご事情がある様です。終活の相談でも「自分の葬式で知り合いの手を煩わせたくない」との理由で一人の旅立ちの準備をされる方もいます。


人が亡くなった時に行う作業は非常に多くあります。まず考えるのがお葬式です。相談される方は「お通夜や告別式と言う儀式の流れは、独り身なので一切必要ありません」と言いきります。セレモニーは無くしてもご遺体は法律で24時間の安置をして火葬をします。ほとんどの方は「直送の火葬プラン」を申し込みます。ですが火葬後の問題も出てくるのです。焼きあがった骨をどうするか、どこに持って行くかを決めておくことも必要です。


お一人様は、自分が死ぬ前と死んだ後の多くの作業を頼む人を見つける必要があります。そのような時に効力を発揮するのが「死後事務委任契約」です。この契約を結ぶと代理人が責任を持って様々な事務作業をしてくれます。申し込みは弁護士や行政書士などの死後事務委任契約を扱っている人に頼むのが一般的な方法です。


最初から弁護士は敷居が高いと思われる方は、お住まいの社会福祉協議会に相談される方法もあります。ただし社会福祉協議会は相談を受け付けますが、実行されるには「法定相続人が一切見つからない」とか「利用する必要があると認められる場合」等の条件がつけられることが多いです。


死後の事務作業のどこまでを契約の範囲に入れるか、そしてどこまでの範囲をお願いするかを事前に決めておき、最終的には公正証書を作成します。難点は費用です。作成費用は死後事務委任契約で44,000円、遺言書は55,000円、そして証人費用2名分で33,000円、かつ公証役場への支払いが68,000円、合計20万円が作成費用として掛かります。


一般社団法人終活協議会「想いコーポレーショングループ」のすべてお任せの完璧プランは187万円もかかるのです。内容は、高齢者のお買い物や受診時の付き添い、福祉施設入居時の立ち会い、介護認定の申請に関する相談、病気で入院することになった場合の身元保証、入退院時の手続き代行、手術の立会い、介護サービス利用や介護施設へ入居時の身元保証や手続きの代行、福祉関係者や病院関係者との協議、危篤時の24時間365日緊急対応、旅立った後のお葬式の施工と納骨や散骨の代行、各種行政手続き、死後の遺品整理、資産の売買、遺産相続の流れ、などを含むすべての事務作業を代行してくれます。


旅立ちの後の作業には、お葬式と納骨の他にも、家の片づけと売却、その前のライフラインの停止、病院や高齢者施設への支払い片付けなども出てきます。それに加えて「さまざまな書類を提出して欲しい」とか「自分の死去を他の人に連絡をして欲しい」等の要望もあります。又「パソコンやスマホの情報を消して欲しい」との希望を持つ人も出てきます。


お一人様の旅立ちには結構大変な作業があるのです。このため死後事務委任契約を結ぶ前には「自分が必要とする範囲はどこまでなのか」をしっかり考えていく必要があります。


貴方が旅立った後に残された家族はこれだけの作業を無償で行なってくれるのです。見送り片づけてくれる家族が周りにいる方は、あらためて今から感謝をされてください。

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