おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

観音菩薩が好きな日本人

旅行先やドライブに出た途中で、目の前に巨大な仏像が見えてきた経験はありませんか?日本各地には結構大きな仏像が建立されています。どのくらいの仏像を「巨大仏」と呼ぶかは明確な基準はありませんが、一説によると40メートル以上の仏像を対象とするらしいです。研究者の中には「ウルトラマンより大きいのが巨大仏の目安だ」と言う人もいます。


日本一の巨大仏は「牛久阿弥陀大佛」です。茨城県牛久市にある阿弥陀如来の立像で120.0mあります。次が「仙台天道白衣大観音」宮城県仙台市にある白衣観音の立像で100.0mです。「世界平和大観音像」は兵庫県淡路市に100.0mでありましたが、経年劣化で現在は解体されました。「北海道大観音」北海道芦別市にあり88.0m。「加賀大観音」は石川県加賀市にあり73.0m。「小豆島大観音」香川県小豆郡土庄町にあり推定68m と言われています。「久留米大観音」は福岡県久留米市にあり62.0m。「会津慈母大観音」は福島県会津若松市にあり57.0m。「東京湾観音」は千葉県富津市にあり56.0m。「うさみ大観音」静岡県伊東市で坐像ですが50.0mもあります。ここまでが50メートル以上ですがそれ以下も入れると数えきれない巨大観音菩薩像が日本には立っています。


日本一は阿弥陀如来像ですがそれ以下はすべて観音菩薩像なのです。何故に日本人は観音様の巨大仏が好きで次々と建立するのでしょうか?有名な四国八十八カ所巡りのお寺の内、約3分の1の30カ所が観音菩薩を御本尊にしています。数ある仏像の中で多くを占めるのが観音像です。日本人は観音様が大好きなのです。観音様とは観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)の略です。人々の苦しみを除いたりお願いごとを聞いたりしてくれる慈悲深い仏様です。


ところで仏様には如来と菩薩があるのですが、違いはご存じでしたか?阿弥陀様とかお釈迦様は如来です。お地蔵様や観音様は菩薩です。実は地位が違います。会社での部長と課長だと思ってください。如来は仏教界の最高位になります。菩薩は最終的に如来になることを目指して修行を積んでいる途中の仏様なのです。法華経では現世で人々を救う姿が説かれ、浄土系経典では阿弥陀如来を補佐する部下として人々を浄土まで案内する役目と言われています。菩薩は仏教界の序列において如来の下の位で、如来の命令で姿を変えます。


日本では観音菩薩は女性的なイメージを持ち様々な姿を取ります。十一面観音や千手観音に見られるように11個の顔をもつとか千本の腕を振り回す仏像もあります。これらを「変化観音」と呼びます。変化観音に対して普通の姿の観音像を聖観音と呼びます。聖観音が右手に持っているのは如意宝珠(にょいほうじゅ)というすべての願いを叶える珠です。左手に持っているのは知恵の水を蓄えた水瓶で口を下に向けて人々に恩恵を与えています。


観音様は我々の悩みを救って欲しいと願うと直ぐに変身して現れます。健康長寿、家内安全、商売繁盛、祈願成就、どんな問題も直ちに解決して悩める者を救い、大いなる慈悲の心で人々を癒す、すごい仏様なのです。「一人残らず全員を救いたい」という強いこだわりを持つ仏様ですから、救える人が無くならない世界に日々苦悩されます。結果、観音様は未だ悟りを開けません。ですから如来になれずいつまでも菩薩の地位に留まるのです。


日本人が観音菩薩像を好きなのは女性的な外観から来る母性のイメージと、自己を犠牲にしてまでも人々への愛を貫く優しさと、日々起きる諸問題の解決に悩む中間管理職の悲哀を表す姿に共感するのかもしれません。

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