おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

家族葬の長所を考えると

お葬式のスタイルが格段に変わりました。家族葬が進んだ理由は、コロナ過と言うパンデミックが後押しをしたこともありますが、一番の原因は皆様が感じる不透明な葬儀費用を出来るだけ抑えたいとの切実な願いがあったからです。訳も分からないまま葬儀屋の言われた通りの金額を青天井で出費するのはコリゴリと言う感情が小規模なお葬式をここまで進めました。家族だけでお葬式を施工すれば当然参列の人数が極端に少なくなるので、祭壇や飾り花の設置費用も抑えられるし、お料理や返礼品などの接待にかかる費用も軽減できます。規模が小さくなると請求金額の明細が良く解かり、節約に繋がります。


皆様が家族葬を選んだ理由の一番は「葬儀費用を抑えたい」です。葬儀屋の宣伝でも「家族葬のメリットは価格の安さです」と言い張る業者も多いのです。たしかに葬儀屋からの請求金額は一般のお葬式より安価です。しかし思っていたより出費額が高いと感じる方も多いのです。お寺を呼んで儀式を行うにはそれなりの準備が必要です。お布施の金額や式典に必要な備品は普通のお葬式と変わりません。一般葬では見込まれた香典収入が一切無いとなると、収支で見た場合は家族葬のほうが必ずしも一般葬より費用を抑えられるとは限りません。家族葬が安く出来ると言う宣伝は思っていた程ではないと感じるはずです。


「家族とごく親しい親戚だけでゆっくり見送りたい」との理由も多くあげられます。一般葬にすると、お葬式当日は「次々と来る会葬者への対応で精一杯になり、故人とゆっくりとお別れする余裕が出来なかった」と言う声をよく聞きます。お葬式はわざわざ駆けつけてくれる弔問の皆様へ、心からの対応と接待をしなければならない儀式であるとの思い込みが先にくるのです。家族葬の長所をもう一つ上げると、身体的と精神的な負担が軽減できるお葬式とも言えるでしょう。


ですが家族葬を行うには最初に悩むことがあります。親戚の中で誰を呼ぶのかを決めることです。呼ばない親戚にも失礼のないような形にしなければなりません。家族だけのお別れを優先させると、葬儀後に知った親戚から「なぜ知らせてくれなかった」と非難されてその後の関係がうまくいかなくなった例も知っています。呼ばない親戚にはお葬式前に電話で事情を説明するのも有効です。特に故人と血のつながりのある親戚関係が残っていて呼ばないなら最初に「故人の遺志で行います」と了解を得ることが大切でしょう。


家族葬は内々で行います。死去が外部に漏れてしまうと混乱もあります。病院からご自宅に搬送すると見慣れないロングボディーの寝台車が自宅前に止まり、普段見ない黒いスーツの葬儀屋が連日ドライアイスの交換で訪問します。これでご近所の方に死去が解かってしまいます。不審に思ったご近所の皆様が安置中に弔問に訪れる事もありました。ご家族のみで行う場合には近隣の方への配慮が必要になります。「家族だけで行うのでご近所のご参列はご遠慮いただきたい」と最初にお知らせすれば理解して頂けます。完全に内緒にするならば、自宅には帰さないで葬儀会館の霊安室か冷蔵庫へ運び込みます。


家族葬を一部の家族だけで決めてしまうと、後々身内トラブルの原因を作ることもあります。故人がご友人やご近所とのお付き合いの程度やお別れを、生前にどのように考えていたのかとの確認も必要です。
長所が多い家族葬ですが、呼ばれなかった方が「自分も最期のお別れをしたかった」 と言われる場合も結構あるのです。

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