おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

仏壇の掃除をしませんか

亡くなったばかりの仏様を病院からご自宅に帰します。仏壇のあるお部屋に安置することが多いのです。葬儀屋は仏壇をチェックしています。お掃除をしていないと思われる仏壇を結構見受けます。鍾乳洞の様に溶けたロウがこびりついた燭台とか山ほどの短い線香が立っている香炉などです。葬儀屋が仏壇を覗くもう一つの理由は中のご位牌を確認することで、このお家の宗派が解かるからです。


「仏壇の扉は閉めるほうが良いのでしょうか」と聞かれることがあります。神棚は穢れを避けるために封じます。仏壇も同様にと考えた誤解がある様です。仏教は死を穢れと考えません。どの宗派のお坊様も「扉を閉めなさい」とは言いません。枕経に来た時に「ご先代にもご挨拶を」と言って、仏壇に回向するお坊様もいます。


埃だらけで申し訳ない思いを避けるために、時間のある今日、仏壇の大掃除をしませんか。仏壇には唐木仏壇と金仏壇の2種類があります。黒檀や紫檀などを使い美しい木目を生かした唐木仏壇は簡単に拭き掃除が出来るのですが、内部に金箔が張ってある金仏壇は金箔や金粉の部分が剥がれるので、強く触らないでください。


お掃除を始める前に仏壇全体の写真を撮っておきましょう。仏壇には沢山の仏具が納められています。毎日見ていても中の備品を取り出した後は、意外と元の状態を思い出せないものです。写真の後、仏壇の中にある仏具を全て取り出します。お仏壇の上から下へと、毛バタキでほこりを取り除いていきます。力を入れすぎると彫刻や細工部分を破損することもあるため、無理せずホコリを落とします。次に化学雑巾を使って内部を軽く拭いていきます。拭き掃除には乾いた柔らかい布が一番です。汚れがひどい場合は濡らした布を固く絞ってからこすり、すぐに乾いた布で拭き上げてください。仏壇は湿気に弱いため、水分が残るとカビが生える原因になります。効き目の強い住宅用洗剤は使ってはいけません。もし薬品を使うときは仏具屋さんで「艶出し液」を購入して使用するとより綺麗になります。拭き掃除をしてみると、内部が線香と蝋燭の煤で、結構黒ずんでいたことが解ります。


内側の掃除が終わったら、外側も毛バタキでほこりを払い化学雑巾で軽く磨きます。天井の部分も埃だらけです。吊り灯篭の電気コードがあるので気をつけてください。仏壇の上も見てください。天板の上は荷物置きの場所ではありません。この際スッキリ片付けてしまいしょう。
最後に仏具類のお手入れをします。位牌は柔らかい布で拭いてください。仏壇同様位牌の金箔や金粉部分は剥がれる恐れがあるため、強く触らないようにしましょう。金属製の真鍮やアルミといった金属製品の仏具は、ピカール等の金属用の研磨剤を使い、その後柔らかい布で拭きあげます。金メッキの仏具は、剥げてしまわないよう軽く拭く程度です。木製の仏具は、柔らかい布で水拭きをした後乾いた布で完全に水気を拭き取ります。


仏壇の内側、外側、仏具の掃除がすべて終わったら、仏具を元の位置に戻します。終わったら、新しいお水を差し上げて、お線香を立てて、ピカピカになったお鈴を横から叩きチーンと鳴らして、手を合わせましょう。


今晩の夢に、再会を望んだ愛する人が、出てくるかもしれませんよ。

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