おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

参列者マナーに疑問です

お葬式には老若男女が集います。初めての経験や慣れていない参列者が多く、ハプニングも起こります。近頃、若者の言動に違和感を感じることが多くなりました。年配者が「この頃の若い者は」を言い始めると年を取った証拠だと言われます。ですが、マナー違反に近い言動には誰かが注意をしないと気がつかないままになります。


お通夜や告別式で受付に出される香典袋に「御仏前」の表書きを見ます。正式には四十九日以降が「仏」の呼び方になります。お通夜から三十五日法要までなら「御霊前」の表書きの不祝儀袋が正式と言われています。なお浄土真宗では「ご仏前」を可としています。


突然の別れに参列をすると、悲しみのあまり髪や服装にまで手がまわらない方も多いです。お葬式は最後の挨拶を交わす正式な儀式です。清潔感ある髪型で参列されたら如何でしょうか。会場では喪主や遺族への挨拶、遺影に向かう焼香の時の時など、何度となく頭を下げる機会があります。そのたびに髪が揺れたり乱れたりする髪型は避けてください。無意識のうちに何度も髪に手をやる仕草は気になります。できる限りまとめるのがおすすめです。昔から「耳より上は慶事、下は弔事」と言われます。ひとつに束ねるときは結ぶ位置を耳より下のラインにするのがマナーです。家族の中には茶髪の若者も珍しくありませんが、明るすぎる髪色でしたら簡易スプレーなどでダークカラーに変えるのもマナーの一つです。


女性の喪服のワンピースから除く生足とか真っ赤なペディキュアが見える足元、男性の黒以外の靴下や喪服から覗く派手なネクタイピンや色付きのシャツなども疑問を感じます。


茶髪の若者数人が会社の先輩の通夜式に参列した時のことです。故人とは、あまり面識が無いようでした。式場中央の焼香台へ列を作り進んだ迄は、良かったのですが、数珠を1人しか持っていなかったので、次々と手渡して合掌を始めます。さすがに周りの参列者から「数珠ぐらい持ってこいや」との小声があがりました。式場を出て彼らはホッとしたのでしょう。誰かが面白いことを言ったのでしょうか。爆笑と言える笑い声が、読経のみが聞こえるホールに響き渡りました。


この頃の家族葬ではご家族の参列者に若い母親がいるケースが多くなっています。まだ授乳が必要な赤ちゃんを抱っこしながらの参列も見受けます。環境の変化でどうしても赤ちゃんは泣いてしまいます。お坊さんが一生懸命に唱える読経の最中に大声で泣き出すことも多いのです。しかしそのまま着席を続けています。ちょっと退席して泣き止むまで、あやしたらいいのにと老婆心ながら思うことがあります。
よちよち歩くようになった小さいお子さんを連れている若い母親も、意外とお子さんの走り回りには無関心です。読経中に走り回り、大きな鈴台にぶつかりそうになった時は、私があわてて抱き上げに走りました。突然の不幸と言う、やむおえない子連れ参列ですが、母親の我が子への無頓着には気を遣うことが多くなりました。


通夜式が終り弔問客もあらかた帰りました。会場にはお線香守りの若者が数人残っています。なにか、騒がしいなと思い式場を覗きますと、棺の蓋が外されて開いています。そして、スマホを代わる代わる差し出して、仏様と一緒の記念撮影です。半分呆れながら、やんわりと声をかけました。
「仏様をゆっくりと休ませて上げてください」

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