おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

葬儀屋はもうかりまっか

終活の相談で来館されたお客様や、そろそろ準備をと考え葬儀会館を見学された方から、帰り際にいきなり「葬儀屋は儲かるでしょう」と言われることがあります。世間では「人の不幸につけ込んでボッタクリのあくどい商売」と思われているのは覚悟していますが、どうやら、それに加えて、皆様の中には儲かる商売として葬儀屋を挙げる人も多いようです。


お葬式とはとても慌ただしいイベントです。心の準備もできないうちに、呼ばれた葬儀屋が次々と説明し、内容を比べて吟味する余裕もないまま「言われるまま決めていった」と感じながら進行していきます。初めて聞く言葉も多く、葬儀備品に関しては比較対象もできずに「どれくらいが相場なのか解からない」と嘆きながら高額商品を決めていきます。


日本人全員がスマホやパソコンを持ち、解らないことや気になることは簡単に検索が出来る時代になりました。アマゾンで「棺桶」をポチリとすると1万円程で購入できます。ところが、打合せで来た葬儀屋の担当者は「棺桶は10万円からになります」と言い張ります。差額の9万円が葬儀屋の利益だと思われると、随分ボッタクリな儲かる商売と考えるのも無理はありません。


そして最後は「請求額の言われるままの金額を支払った」という思いの残る方が多いのです。確かに賞味2日程の内容で100万円程の金額を請求される喪家様としては、こんな売り上げを毎日のように行なうなら、さぞかしすごい収入になり、それに応じて利益も大きい商売だろうと思うのも当然です。


しかし、お許しいただいて声を大にして申し上げると「本当の話、皆様が考えておられるより、全然儲からない商売ですよ」と叫ばしていただきます。売上額が大きいので利益も多いと想像されるでしょうが、正直言って喪主様が払う金額からの利益はありません。


請求書に記載された祭壇のレンタルを含む会場使用料は、最初に購入した1000万近くの祭壇の購入費のローン返済に充てます。棺桶を含む葬儀備品の売り上げの利益はすべて人件費に消えていきます。光熱費を含む葬儀会館の維持費も膨大な金額です。葬儀屋が喪主様から受け取る金額からは利益は出ていないのです。それでは、どこから差額を貰うのかと言うと、お花屋さん、仕出し料理屋さん、霊柩車やハイヤーなどの車関係の業者さん、礼状や会葬返礼品などの業者さん、そして大きい声では言えませんが中には口利きをしたお寺さん、などからの手数料が利益を出しているのです。そもそも葬儀屋という商売は仲介業から始まりました。昔は会社の総務課とか町内の世話役さんに「葬式は任せろ」という「仕切り屋」がいてお葬式を行いました。花屋さんとか弁当屋さんなどのあちこちの業者に声をかけて一つのお葬式を作り上げていたのです。そして仲介の御礼を貰いました。


協力業者の納品価格を抑えることは、業者いじめに繋がり内容の劣化を招きます。差額で利益を出すには薄利多売しかありません。ところが、ほとんどが家族葬になり料理や返礼品の数量が出せなくなりました。結果近年つぶれる葬儀屋の話も聞くようになっています。
そのような内訳ですから、もし「葬儀屋は儲かる商売」などのうわさ話を聞いた時は「ブログで読んだけれども、どうやらそうでもないらしい」と弁解して頂けるとありがたいです。


葬儀屋という商売は皆様が思うほど儲かりません。続けられる理由は「あなたがいてくれたので無事にお葬式が出来た」の一言が聞ける為です。

×

非ログインユーザーとして返信する