おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

あのサンタの残した想い

前回のブログで綴った、サンタクロースの衣装で旅立させた仏様には、後日談があります。初七日のご挨拶に線香とローソクを持って伺いました。少しずつ悲しみから癒えているように見える奥様が、ポツリポツリとお話してくれました。


「毎年、夫がサンタクロースの衣装でプレゼントを届けていた保育園に、行くことが叶わなくなってしまいましたので、今年から止めてしまおうかと思っていたのですが」


お話は続きます。


「考え直して、私が届けることにしました」


「そうですか、仏様も喜んでいらっしゃるでしょう」


「子供たちが、サンタさんが何で来ないのと聞くのです」


園児たちは先日の葬儀に来ていましたので、亡くなったことが解かっている子もいたようです。


「サンタさん、どっかに行ってしまったの」


「困ってしまって、遠くに行っています。と答えました」


帰り際、夕方の空に金星が瞬いていました。星を見つけた子供たちが声をあげました、


「サンタさんお星になったの」


「そうそう、サンタさんは星になったの。でも、お星さまになったサンタさんは、みんなを見ているから、これからもプレゼントは届くからね」


薄暮の空に子供たちの声が響きます。


「サンタさ―ん。また 来てね―」



葬儀屋の反省文


実はこの仏様の出会いの後、随分悩み葛藤したことがあります。サンタの衣装の納棺までは良いと思いましたが、その後葬儀会場で保育園児達に、サンタクロースのご遺体を見せたことは、やってはいけないことだったとの後悔です。園児たちの夢を壊し、ショックを与えたのではないかと反省もしています。この仕事は人の悲しみに踏み込んでいきます。良かれと思ったお手伝いも、一歩視点を変えると、余計な、おせっかいになりかねないのです。今でも残る心のモヤモヤが、この「おくりびとの日記」を綴るきっかけにもなりました。お葬式は難しいイベントです。だからこの仕事を続けます。

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