おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

喪服はお嬢様のあこがれ

女性が一生に一度着てみたい服があります。一つはウエディングドレス。もう一つが和装の喪服だそうです。男性がドキリとする服装が喪服の未亡人とも言われます。着物姿の女性は成人の日以外は、ほとんど見なくなったと言われるかもしれません。ですが、葬儀会館では和装喪服が結構人気なのです。


少し前までは、着物の喪服を着るのは配偶者を亡くし喪主を務める未亡人との位置付けがありました。この頃は、未亡人に限らず、娘さんや、お孫さん、息子さんのお嫁さんが、「形見の喪服があるから、チャンスなので着てみたい」とリクエストをされ、急遽当日に着付け師を呼ぶことも多くなりました。喪服のレンタルも結構需要があります。黒い着物は、女性がどうしても着てみたい服装らしいのです。
喪服が好まれるのは、和装の方が洋装より何となく格が高いという風潮もあります。


喪の色として黒が使われたのは明治以降です。それまでは白色だったそうです。現代でも地方では黒喪服の衿や肩に白い布をかける風習が残る地域があります。


寒い季節に着る着物は、胴裏・袖裏・裾回しなどに裏地を付けて仕上げてある袷(あわせ)を、暑くなる季節には、裏地をすべて除いた単衣(ひとえ)を用意します。


正式な喪服には五つの染め抜き家紋がついています。受け継いだ喪服には実家の紋が入っています。昔はそれを嫁ぎ先の紋に入れかえるなどが行われていました。そのような風習を知っている方は皆無になり、いずれの紋でも差し支えありません。レンタルには一般的な桐、木瓜(もっこう)、梅鉢の代表的家紋が付いています。


着付けをお願いする場合は備品が全て揃っているか注意してください。
帯揚げ・帯締め・長襦袢・半襟・襟芯・肌襦袢・裾避け・足袋の他・伊達締め2本・補正用タオル・帯枕1・前板1・コーリンベルトなどの紐5本程が必要です。普段着ていないので、当日の忙しい時間になると、備品が足りないと大騒ぎになります。レンタル喪服でも肌につける備品はすべて買い取りか準備をしておくことが必要です。


若い方が、友達に着付けをお願いしたときは控えめな装いとすることが大切です。
襟合わせは、肌が見え過ぎないよう深めにして半襟を少しだけ出します。衣紋(後ろ襟の部分)も指3本ほどで、抜き過ぎないようにします。裾をあまり長くしないとか、帯は低めの位置で、お太鼓を小さめに作ることも知っといてください。帯締めの房は左右とも下を向けます。紋の高さは左右同じに揃え、背中の紋は真ん中にたるまないようにしてください。美しく着こなしてこその、喪服美人なのです。


着馴れていないので、立ち振る舞いにも注意が必要です。椅子に座るときは決して後ろにもたれないことです。帯がつぶれては台無しです。焼香に歩みだすときは歩幅が狭いこと知っておき、つまずきを防いでください。袖さばきも重要です。


先日のお嬢さんは綺麗に着付けてもらいましたが、締めすぎたせいか読経の最中に気持ちが悪くなってしまいました。出棺前に洋装に着替えて一言


「インスタにアップしたから、もう脱ぎます」

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