おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

家族葬で知っておく点は

「家族葬を行うには何を知っておいたほうが良いですか」と言う質問を受けました。ほとんどのお葬式が家族だけの少人数で集まり簡素化された式典で故人を送り出す「家族葬」のスタイルで行われます。家族葬と呼ばれるお葬式には的確な決まりごとが無いために、遺族を中心とする喪家様側と、施工を依頼された葬儀屋にも、お互い「手を抜く儀式」が行なわれるようになったと感じています。


家族葬を行うには葬儀屋選びが大事です。ごく内輪だけで行う家族葬は人数が集まりません。突然の死去で病院から紹介された葬儀屋に任せたら「数人の家族なのに葬儀会館内の一般葬が行なわれる大きなホールに安置された」との声もよく聞きます。人数に見合わない大きな式場では、空いている空間を寒々しく感じます。それでなくとも、家族を亡くしたショックが大きく圧し掛かる心に、付け加えて会場の大きさとズラリと並んだ空席の椅子を見て、かえって寂しさが増してしまうのです。


お葬式はどこの葬儀屋でも任せて大丈夫とは考えないでください。家族葬でのお葬式は、人数に見合うホールを持った葬儀会館を選ぶことが大切です。「家族でゆっくりと見送る、温かいお葬式にしたい」と希望されても、結果大きなホールに安置され、寒々とした寂しい気持ちを味わうと後悔が先にきます。やはりいつもブログで綴る様に、出来れば内見会などを活用し、万が一の時はこのホールで行なおうとの心構えも大事です。


家族葬だから何かを特別なことを行うということはありません。かえって家族だけならば勝手に伸び伸びとやってくださいなどの雰囲気も生まれかねません。お寺を呼ぶ仏式のお葬式を希望すれば安置から納棺式、通夜式告別式、火葬場での骨上げ、初七日法要の流れで執り行われます。家族だけだからと荘厳な儀式ですが、妙にリラックスする喪家様も見受けます。


請け負った葬儀屋の中には「家族葬は、手を抜ける仕事」と言い張る業者もいます。昔は親戚が多く集まるお葬式は「葬儀の知識」を多く知る方もおられるので、担当者も注意して施工していました。一般葬では参列した多数の皆様の注目もありますから、儀式の備品やご遺体の扱いの所作なども、きちんとした内容で行わないとクレームに繋がったのです。


少人数の家族葬を受け持った弊社のスタッフが喪主様にむかって「御家族だけのお葬式ですから気楽に自由に過ごされ下さい」と親切心で伝えました。喪主様が返してきた言葉は、我々の心を打ちました。


「母の望みで家族葬を行いますが、母はキチンとした人でした。家族だけですが決して手を抜いたお葬式は望まないはずです。私も一生に数回しかないお葬式の経験を充分に味わいたいと望みます。昔から伝わるお葬式の流れと風習を残らず教えてください。亡き母には儀式に則ったキチンとしたお葬式を家族の手で行い送り出したと感じて欲しい」でした。


その場で担当を私に変わりました。安置の注意点から納棺式での死に装束の説明、通夜式では、ご家族4人が話し合い交代で睡眠をとり一晩中お線香を絶やさない「夜伽」を行いました。お別れの儀式から出棺の注意点、骨上げの作法、初七日のから49日までの風習など出来る限りのことをお話しました。「母も満足したと思います」との言葉を頂きました。


家族葬では葬儀屋の決定と担当者の重要度が増します。最初から最後まで手を抜かずキッチリとまかせることが出来る葬儀屋が、お葬式の満足度に影響してくるのです。

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