メイド喫茶の名は冥途だ
厚労省が発表した人口動態統計によれば昨年の死亡者数は143万9809人です。これは前年の137万2755人から6万7054人増加しています。総人口に占める高齢者の割合は増え続け、そして次々と死んでいきます。この国では少子化対策は勿論ですが、同時に死に行く高齢者を元気にさせて健康寿命の延命も大きな課題なのです。
群馬県桐生市のNPO団体が異色のサービスを始めたとマツコ・デラックスが司会を務める「月曜から夜ふかし」で取り上げられました。その名も「冥土喫茶シャングリラ」と言います。冥土喫茶とはどのような場所でしょうか。店の入口に紙と青いビニール紐製の手作り感あふれる「三途リバー」が設置されています。トイレは「極楽浄土」と命名されています。メニューは「冥土弁当」などが用意され支払いは現金のみで、支払い時には「三途の川の渡し賃をお願いします」という仕様です。客層も高齢者中心で80代の親を60代の息子が連れてくる親子連れなどもいます。
店内ではメイドと呼ばれる女性従業員と一緒に写ったブロマイド(200円)を購入できます。購入者にはメイドさんから「この写真は魔除けになるわよ」と冥土ジョークを飛ばしているとの説明がありました。
「初めて来た時に楽しかった。また来ました。ビンゴ大会とかやって、なんか和むよね。老後は楽しみが少なくなるから、こういう和んだ雰囲気が落ち着くのです」「冥土って呼ぶ言葉は知っているけども、実際にどんな所かなんて、誰も見たことも聞いたこともない。大事なのは今、いかに楽しむかだと思う。高齢者のみんなが、家にこもっていちゃダメ、どこか外に居場所を見つけて出ないと、直ぐに死んじゃうわよ」「3年くらい前にこの近くのデニーズが閉店しちゃって、溜まり場がなくなっちゃった。だから月1回だけど、この店ができてよかったです」
仕事仲間だという女性3人組のご意見です。
群馬県桐生市はかつて織物産業の中心地として華やかに栄えました。しかしバブル崩壊後は人口の流出に歯止めがかからず2014年には日本創成会議で「消滅可能性都市」と指摘されました。冥土喫茶シャングリラを運営するNPO法人キッズバレイの代表理事星野麻美氏は「ここは桐生市の中心地に位置しワーキングスペースとして運営していました。周辺にはレストランが何店舗かありましたが、3年前にデニーズが閉店して高齢者の皆様が集う居場所が消えたのです。どの年代にとっても居場所は大事です。私達の取り組みが他都市の自治体の参考にもなればと思っています」
仏教の死後の世界観において「冥土」は死者が行く場所で「浄土」は仏様の住む清浄な世界とされています。冥土は死後に迷い成仏出来ない魂が行くといわれる暗黒の世界です。中国の冥府信仰に由来し仏教の世界観と融合して地獄,餓鬼,畜生の三道があります。この世において仏道修行を怠った人々は、死後にこの冥途と言う場所にたどり着きます。真っ暗な世界をさまよい歩く毎日なのです。
店のメイドのリーダーココさん(66)はお客様の帰宅をこんな言葉で送ります。「この世に疲れましたら、またお越しください」。全国津々浦々から「冥土という終わりから始まる場所」に何かを求めて来る、人気を集めた喫茶店のお話しでした。