おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お地蔵様にご注意下さい

街中を歩いてみると、交差点脇とか踏切の傍、そして道路の端に石で作られたお地蔵様を見つけることがあります。見かけた方が手を合わせている光景に遭遇した人もあるでしょう。親しみをこめて「お地蔵様」と呼ばれていますが、正式にはインド生まれの地蔵菩薩と言う仏様です。サンスクリット語ではクシティ・ガルバと言うそうです。クシティは「大地」ガルバは「胎内」を表し「大地の母の蔵」の意味で「地蔵」の名が付いたと言われています。


地蔵菩薩は状況によって姿を変えることが出来て、我々を助けてくれる仏様です。人々の苦悩を慈悲の心で包み、救ってくださるのです。そして、お地蔵様の大事な役目は突然の災難にあった人間の苦しみを、自ら「身代わり」になって引き受けてくれることです。


お地蔵様は子供を守る仏様でもあります。赤い涎掛けや頭巾を付けているのは赤子の象徴です。赤色は清い色と信じられ魔よけの意味もあります。長寿のお祝いの還暦で赤い着物を身につけますが、これは干支が一巡りして老人が赤子に還るから赤いチャンチャンコを着るのです。


村の境界や道の辻に立つお地蔵様は、集落を守る「道祖神」の役目を持ちます。昔は疫病と言われる流行り病で集落の全員が倒れることもありました。外から来る悪い病を防ぎ、旅に出る村人の安全を守る守護神でもあったのです。石仏が6体並んでいるので「六地蔵」と呼ばれますが、この6体が6種類の世界(地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道)から迷い出る悪霊に対して、1体ごとに身をもって防いでくれています。


さて、ここからが本題です。「道端に祀ってあるお地蔵様には、手を合わせてお願い事をすることは、絶対にしてはいけない」という、言い伝えはご存じでしたか?


街中のお地蔵様は、交通事故の死亡現場や、踏切事故の轢断事故の場所に建てられます。言い換えると、この世に未練を残した死者が地縛霊として悪さをしないように抑えてくれているのです。同じように集落の六地蔵は、向こうの世界からの悪い霊を入れないように防いでいます。このお地蔵様に向かって、手を合わせて「幸せになれますように」などのお願いすると、お地蔵様に救いを求めて寄ってきた悪霊が「この人も不幸な仲間だ」と思い、手を合わせた人に取りつくのです。これが「お地蔵様に願い事をしない」理由です。


ですが当然、お寺のご本尊の地蔵菩薩や境内に安置されている水子地蔵は信仰の対象です。手を合わせ敬い願い事をする事や、亡くした子供へのご供養の対象にして問題ありません。


しかし、町の中のお地蔵様は、映画の陰陽師やエクソシストと同様の力を持つ、悪霊払いの為に祀られているのです。街中に建てられているお地蔵様の周りには、誰にも供養してもらえない地縛霊が救いを求めてさ迷っています。悪い霊がお地蔵様にウヨウヨと漂い取りついています。心の弱い人間が、つい手を合わせてお願い事をしてしまうと、これ幸いとばかりに悪霊が乗り移ってしまうのです。


街中で見かけたお地蔵様の前を通る時には手を合わせて「幸せをお願いしたり、家内安全を祈ったり」することを絶対にしないでください。見つけたら立ち止まり「いつも悪霊から我々を守っている」ことに対する感謝の気持ちだけを伝えてください。


身近なお地蔵様の話です。信じるか信じないかは、あなた次第です。

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