おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

危篤の連絡を受けた時は

高齢者の家族を病院や介護施設に預けているお家では、深夜とか明け方に着信音を聞くと「その時が来たか」と身構えて電話に向かうそうです。受話器の相手の医師や看護師から「危篤状態ですから、すぐにいらしてください」との言葉を聞くと、急いで出かける準備に取り掛かります。


危篤の連絡が突然である事もあれば、長い間療養していてある程度覚悟している場合もあると思います。ですが、やはり家族としては宣告を受けた時の動揺やショックは大きいのです。一報を受けて慌てふためく人も多いのです。高齢者の旅立ちの用意の一つとして、危篤の連絡を受けた時に、やるべきことや準備をしておくことも大事です。


まずは、電話を受け取った自分以外への家族への連絡を考えます。連絡先の優先順位を決めておくと慌てずに済みます。順番通りに電話を始めます。出来るだけ簡潔にしますが内容に漏れの無い連絡が必要です。連絡がつかない場合は留守番電話に伝言を残すか、メールを送信して折り返し連絡をもらうようにするなどの確認も必要です。


緊急の連絡ですので簡潔に用件のみを伝えます。特に病院の住所と病棟や病室番号をしっかりと伝えます。深夜や明け方ですと、駆けつけても正面玄関は閉まっている場合も多いのです。最初に電話を受けた時にどこから入れるかを聞いておくことも大事です。


出来るだけ急いで病院へ駆けつけます。危篤後は状況がどのようになるかが分からないので自宅と病院に距離がある場合は、着替えや現金(交通費や滞在費)の準備もしておきます。


病院へ到着して容態がある程度分かり、余裕があるならば、親戚や職場への連絡をしておきます。親戚には状況が解ってから連絡の方が良い時があります。あまり交流のない親戚への早すぎる連絡は、その後の家族葬の準備を考えると混乱を招くこともあるのです。


もしもの事を考えると職場にも一報を入れておくことも必要だと思います。長期的に休むことになるかもしれません。あらかじめ家族が入院していることを上司や部署内に相談しておくと、休暇中の引き継ぎなどの対応がしてもらいやすくなります。


これから終活として自分のエンディングノートを記入する方は、危篤時に来て欲しい人を選んでおくことも、残された家族の負担を軽減します。多くの人は、看取りをしてくれる人と、お葬式に来て欲しい人は違うことが多いのです。危篤時に駆け付けてくれる家族には、延命処置などの回復後の治療についての意思決定が必要な場合もあります。意識のないままで身体中をチューブで巻かれて生きる事を望むか、余計な延命は止めて欲しいか、しっかりと伝えておくことも終活の一つです。


危篤の連絡を受け入院しているまだ息のある家族の脇に寄り添うことが出来た貴方は幸運です。ほとんどの方は間に合わず、向かっている途中で死去の連絡を受けるのです。間に合った方は「あなたにしかできないこと」してあげて下さい。ベッドの脇で手を握り語りかけてあげてください。


意識が無いように見えますが、聴覚は最後まで失われないと言われています。あなたの声と想いは大切な方へ確実に届いています。

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