おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

遺影の写真を選んだ後で

お葬式の打合せを進めています。リビングのテーブルの上には遺影写真を選ぶ為に、厚手のアルバムが数冊積んであります。やっと数枚の遺影写真候補を選び終わった喪主様が、ため息をつきながら「このアルバムはどうしよう」と呟きました。家族が亡くなると残された遺族は故人が遺した持ち物を整理しなければなりません。とくに悩むのが故人の思い出が溢れるたくさんの写真を綴じたアルバムです。厚手のアルバムは保管しづらく、仕舞うのにもかさ張り収納場所を塞ぎます。だからといって、やむなく処分するにしても、ゴミとして捨てて良いのか解からず、ためらう人も多いのです。


お葬式が一段落したら遺品整理が始まります。とくに飾り棚に置いてある額に入れた写真とか壁に張りつけてある写真などは処分に悩む品です。まず家の中にある写真を探して1箇所にまとめます。本棚や押し入れ中にはアルバムが入っています。机の引き出しの中の手帳や日記帳などの中にも写真が保管されていることがあります。これらを全て並べます。


遺言やエンディングノートで写真の整理について故人の要望が残されているか確認します。ある場合は想いに沿って整理を始めます。並べた写真を見ながら残すのか処分するかに分けて行きます。アルバムの場合は必要な写真だけを抜き取ります。どちらか決められない場合は、保留にしておき時間をおいて改めて考えます。皆様が残す写真は、家族や親戚が写っている結婚式や誕生日などの故人の節目の写真や、家族旅行などの思い出の写真などが多いようです。


親戚との写真や友人との写真は、一緒に写っている人に形見分けとして渡す方法もあります。勝手に処分すると後で「欲しかった」とか「思い出の写真を勝手に捨てた」など不満が出るケースもあります。故人と親交の深かった方は写真を通して思い出を共有することができます。ただし「形見分け」は相手が遠慮した場合は、無理強いしないでください。


選び終わった写真は処分します。住居の自治体のルールに従いますが「燃えるゴミ」になる様です。写真は個人情報になるので、出来ればシュレッダーで粉砕するか、ハサミで切り刻んで、解らないようにしてから捨てます。生ゴミ置き場に写真を放置したくないという方は、ごみ処理施設に直接持っていく事も可能です。遺品整理で出てきた、廃棄する家具などと一緒に持ち込んで処分をされる方も多いのです。処分費用や事前申請の有無などは事前に自治体のホームページや電話で確認してから、ゴミ処理場へ搬入してください。


写真には故人の魂が宿ると信じる人もいます。生ゴミと一緒に処分するなど、とんでもないと考える方は「お焚き上げ」をしてもらうといいでしょう。お焚き上げとは神仏にかかわる物や、故人の思いがこもった物を燃やして供養をしてもらうことです。お焚き上げは、お寺や神社などで引き受けてくれるところがあります。当然お布施や祈祷料を用意します。
お焚き上げをしてくれる神社仏閣が見つからない場合は、業者を頼るのもひとつの手段です。遺品整理の業者が引き受けて供養してくれる場合や、お焚き上げの代行サービスをする業者もあります。遺品の処分に心を痛める人も多いのです。プロの力を借りましょう。


「この写真は残しておこう」そう言って喪主様が手に取った一枚がありました。ずいぶん前に産院で撮られた写真のようです。喪主様の初めてのお子さんで、故人にとっては、初孫となる小さな赤ちゃんを抱いた、笑顔のお婆ちゃんが写っていました。

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