個人情報は漏れています
「お葬式が終わったら急に墓地とか仏壇とか納骨堂のパンフレットが送られてきた」とのクレームが入りました。どこかの誰かが個人情報を漏らしているのです。もちろん「弊社ではありません。記入して頂いた顧客情報を書きこむ見積書には個人情報保護の順守を掲載しています」と直ぐに否定します。しかし疑われるのも当然です。葬儀屋と言う仕事は喪家様の個人情報をかなり詳しく知ることが出来ます。住所電話番号の他に家族構成とそれぞれの年齢や職業、そして親戚の数や友人の住所や職業なども知ることが可能です。もっと踏み込むと、嫁と姑の関係や兄弟間や姉妹間の仲の善し悪しなどの人間関係までも知りうることが出来ます。
お葬式の会場内でもいろいろな情報が耳に入ってきます。突然の出来事で気持ちの定まらない状況ですから各人の感情が吹き出すのです。儀式の間だけでも平静に過ごしてほしいと思うのですが、葬儀後の相続争いや親戚同士のヒソヒソ話も始まります。葬儀屋はさまざまな個人情報を知りえる立場なのです。
耳に入る雑多な情報は絶対に漏らさないのが当然です。ですが、どこからか漏れるのも現実です。個人情報保護法以前には様々な情報漏洩がありました。参列者に渡す会葬礼状には住所氏名が書かれています。一般客に混じり喪家様とは全然関係のない業者が会葬礼状だけを貰いに来たこともありました。住所が解かれば香典返しのセールスに行けるのです。パンフレットを送るだけでなくセールスマンが自宅に来て「生前故人にお世話になったので線香をあげたい」とあがりこみ、その後売りつけると言う悪質なケースもありました。
以前は「一件数百円で買い取ります」と言う電話も多くかかってきました。仏壇や墓石などの高価な品は一つ売れれば十分に元が取れたのです。政治家も情報を欲しがります。毎日、後援会事務所から「今日はお葬式が入っていますか」と電話が入るのです。参列者からの日時の問い合わせの可能性もありますから「あります」と答えます。すると、通夜や告別式に秘書や後援会長もしくは政治家本人が参列して面識もないのに「故人にはお世話になりました」と愁傷に頭を下げます。迎えた喪家様は「多忙なのにわざわざ来てくれた」と恩義を感じます。その一回の参列が次の選挙を迎えると「清き一票」に結びつくのです。
世間では死亡情報を漏らすのは葬儀屋に違いないと思っています。しかし看取った病院とか運んだ寝台車の業者とか役所や火葬場にも、もしかしたら不埒な人間がいるかもしれません。今回の漏洩もどこから流れたかはわかりません。しかし葬儀屋には故人情報を漏らすメリットが無いのです。会葬返礼品や仏壇墓石の相談には長年の付き合いがあり信頼できる業者を紹介します。少しの手数料欲しさに契約以外の業者を紹介する必要は無いのです。
お葬式の情報漏れは個人情報保護法が施行されてからは少なくなってきたようです。ですが完全に守られているとは言いえません。特にネットからの申し込みにはお葬式後の様々なセールス活動があるとも聞いています。お葬式と言う個人情報満載のイベントを任せるのですから、くれぐれも信用できる葬儀屋を選んでください。世の中まだ情報管理と保護の意識が高いと思える葬儀屋は少ないのが実情です。
もしお葬式後に貴方のお家に、不審なパンフレットが届いたりセールス電話があったり、セールスマンが来訪した時は、無視するか担当した葬儀屋に一報を入れてください。