おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お寺で葬式をしませんか

近くのご寺院がリニュアールを機会に葬儀会館を建立しました。お寺が葬儀会館を作ってしまうと、葬儀屋にとって商売敵になると考える方もおられるかもしれませんが、逆に有難いことなのです。今までは弊社の会館がお葬式や法事で塞がっている時は、亡くなった人の連絡が入っても、日時を先に伸ばすか、他の葬儀屋に任せる方法しか無かったのですか、近くに使える葬儀会館がもう一つあれば、お葬式が重なっても問題が無くなります。そしてお寺は場所を貸し出すだけで、引き取りや、安置からの納棺、飾り付けからお葬式の進行、そして飲食の提供の準備と設営など、葬儀屋が手伝う仕事は充分にあるのです。


ほとんどの葬儀が会館で行われるようになりました。葬儀会館の祭壇などは、どうしても簡素な飾り付けになります。そしてご遺体の安置するお部屋がコンクリートむき出しの殺風景な空間になることも多いのです。もう少し豪華な場所で送ってあげたいと望む家族もいます。葬儀会館のお仕着せの祭壇や飾り付けに納得のいかない喪家様もおられます。その時は、お寺でお葬式を行いませんかと、お話しすることがあります。もちろんお寺を借りることは、まだまだハードルが高いこともありますが、喪家様とお寺との関係やお葬式の人数や内容を判断して、可能ならば菩提寺のお寺でのお葬式をすすめることがあります。


本堂を借りる使用料については、お布施に会場料相当分を含める所と寺院から施設使用料を別途請求される場合があります。その金額は約10万円が相場で、一般の葬祭ホールの利用料と同程度です。なかには檀家と菩提寺ならば無料ですというお寺もあります。住職の「寺院は檀家で支えられている」という考えからですし、それこそ「お気持ちで」と、極めて安価で本堂を提供するお寺もあります。


菩提寺を葬儀会場にするメリットの一番は荘厳な雰囲気です。国宝級のご本尊が祀られ、ご本尊の周りをたくさんの仏像が並びます。又、これらご本尊や仏像の周りには、宗派のしきたり通りに相応した飾り付けがなされています。簡単な葬儀ホールでは味わえない荘厳な雰囲気の中でお葬式を執り行うことできます。


お寺の本堂で、お葬式を行えばお坊様が葬儀会館への往復が無くなります。当然、送迎や御車代の用意をする必要が無くなります。火葬後お寺へ戻り、その日のうちに初七日法要を行い、そのまま寺院内にある墓地に納骨する場合は、移動の時間や手間が軽減できます。


デメリットもあります。基本的には檀家のみが可能で、檀家でない家は断られる場合があります。又、お寺は葬儀を行う目的で建てられた建物ではないため、設備面での快適性に劣るのも欠点です。ほとんどの本堂には空調設備がありません。冬などは寒さ対策の為、暖房器具を持ち込みます。そしてバリアフリーに関する整備まで手が回っていないところも多いです。足元の不自由な高齢者や車椅子などは難しい対応になります。一般参列者が多い場合は、待機場所や食事のスペースが屋外テントになることもあります。駐車場も大きくないので、自家用車で来る参列が多い時は、ご近所に迷惑をかける場合も出てきます。


家族葬のような小規模なお葬式ですとこれらのデメリットは障害になりません。お寺とのおつきあいが長い檀家は、お葬式が小規模になった現在、寺院の本堂で送ってあげるお葬式を考えてみたら、如何でしょうか。
高い天井と豪華な飾り付け、そして見上げるようなご本尊、周りに漂う長年の抹香の香り、お寺の本堂でのお葬式はとても素敵ですよ。

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