おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お墓の向きを気にします

旅立った家族の四十九日法要を済ませたご遺族からこんなお話しを伺いました。「先日、墓地購入のために見学に行った。しかしお墓の向きが気に入らないのだ」ムラゴンの皆様は、新しくお墓を建てる時にお墓の向きを気にかけた記憶がありますか?大概の人は、隣のお墓と同じに方向で建てたので気にしなかったと言われます。あるいは公営墓地なのでお墓の向きは決められていたと話されるのです。


家を建てる時に太陽に対する向きは重要視されます。窓をどちらに開口するか、玄関はどちらの向きにするか、水回りはどの方角が良いか、など気にする個所は驚くほどたくさんあるのです。風水などを考え始めると大変な作業になると言います。墓相学の世界では、南向き・東向き・南東向きに建てるのが良いとされています。 この方向に建てる事で、残された家族が健康で明るい家庭を築けると考えられているのです。南向きや東向きの理由は、風水の陰陽論によるという説もあります。


墓石業者で言われているのは「墓石の正面を北に向けるのは絶対に避ける」です。何故、北向きを避けるのでしょうか?その大きな理由として方角による吉凶よりも日当たりと水はけが挙げられます。北向きにすると雨水が乾かなくなり溜まります。すると墓石に苔がつきます。寒冷地では凍結して墓石にダメージを与えます。北向きだと魂のエネルギー源である太陽光が墓石正面にあたらないのも避けるのです。


お坊様は「お墓は東向きか南向きが良い」と言います。浄土系の仏教には「西方浄土」という言葉があります。お釈迦様は西方にいます。西に向かって拝むにはお墓は東向きにするべきだという考えから来ています。ただし、これには故人が仏様の方角を向くようお墓は西向きのほうが良いという説もあり、解釈によってさまざまです。南向きは大陸文化の影響を受けた考え方と言われます。確かにほとんどの有名な御寺は東向きか南向きに建てられています。中国の占星術では、必ず残されたご家族の住む家の方向へ向けてお墓を建てます。亡くなった人が永久に住むお墓を、残された家族が住んでいる家を長く見守ってもらうようにするために、正面を住む場所に向けて建立するのです。


新しくお墓を立てる時に方角について、墓相学などの見地から気にする人もいますが、私はあまり意味がないと考えます。しかし気持よくお参りするためには、どのような向きやレイアウトが良いのかは、再考する必要があるかもしれません。


菩提寺の境内墓地の中にはお墓の正面を指定する所が可能な御寺もあるようです。しかし現在の公共霊苑や民間墓地などでは、すでに整地されていて区画や向きも決まっています。特に都市部の霊園や公園墓地は、参道に囲まれた一区画分に2列のお墓が背中合わせに並ぶレイアウトが大部分です。仮にこの背中合わせのお墓の片方が良い方向を向いているならば、もう片方は悪い方向を向いていることになります。この配置はお墓同士が背中合わせになっているので、お墓参りに来ている人達を気にすることなく、手を合わすことが出来るように考え出されました。


今の墓地ではお墓の向きを意識するのは難しくなっています。それでもムラゴンの貴方はこれから入るお墓の向きを気にしますか?

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