香典の表書きは迷います
一般弔問客が多く参列するお葬式の受付で慌てる人が次々と出る場面があります。キリスト教のお葬式と、神式のお葬式です。会社関係などで訪れた弔問客の中には故人の宗派などには関心を持たずに葬儀会館に来られます。いつもと同じ仏教のお葬式だと思いこむのです。受付に来て初めて「本日のお式はキリスト教です」とか「本日のお式は神式です」と張り出された案内札を見て慌て始めるのです。
近年では無宗教葬と言われる宗教離れのお葬式も増えています。お葬式をされる宗派と違う信仰を持つ参列者や、もしくは宗教を信じず否定する参列者を業界用語では「非信徒」(ひしんと)と呼びます。一般的には使いません。この非信徒の参列者は時として「焼香は絶対にしません」等でお葬式の流れと違う作法をする方も見受けます。非信徒で参列する際にはその宗教の作法やマナーを尊重するのが大切です。
受付で慌てる理由の多くが持って来た香典袋の表書きが異なることに気がつくからです。仏式なら「御香典」「御霊前」「御仏前」で問題ありませんが、キリスト式では合わなくなります。キリスト教でお金を贈る場合は「御花料」「献花料」と書くのが正式な作法です。カトリックとプロテスタントのどちらでも問題ありません。コンビニ等で売っている不祝儀袋に「御花料」と自ら記入して持ってくる方も多いのですが、気をつけないと袋の表面に蓮の花が印刷されているのを持参されています。これは仏式専用なのです。キリスト教の正式な「御花料」の袋は百合の花が描かれていますし、十字架の絵が付いている袋もあります。キリスト式と解かっているなら、くれぐれも蓮の花が印刷された不祝儀袋は使用しないでくだい。
神式の場合は、香典袋は無地のものを選びます。水引は黒白か双銀、双白が一般的です。香典袋の表書きは「御神前」が一般的ですが「御玉串料」や「御榊料」「御神饌料」と記載する方もいます。霊祭や式年祭の場合は「御玉串料」を使用します。又「御霊前」は宗教を問わず広く使用できる表書きですから、神式の場合も使用出来ます。無宗教葬の場合も「御霊前」なら一番無難と言われています。
「御霊前」の表書きは仏式全般に使えて問題ありませんと言われていますが、実は仏式でも使えない場合があります。仏教でのお葬式と一口に言っても実際には様々な宗派が存在します。そして宗派によって考え方は大きく異なるのです。例えば浄土真宗です。浄土真宗は「南無阿弥陀仏」と唱えれば亡くなって直ぐに必ず極楽浄土に行くと約束されます。阿弥陀仏の救いの力で往生できる「他力念仏」です。亡くなった人は必ず極楽で仏になれるのです。「お葬式の時の故人はすでに極楽に生まれ変わっている」と教えています。そうすると死亡時には「霊では無く仏」になっていると考えられているため、お葬式に持参するお香典の表書きは「御仏前」となるのが正式です。一方、他の宗派では無くなった人は自分で四十九日の修行を経て霊から仏になると考えられているため、香典の表書きは「御霊前」となります。
一般的な「御香典」なら宗教を問わず全般に使えそうですがやはり仏式に偏ります。困った際は葬儀屋のスタッフに相談してください。宗派に会った香典袋をご用意しています。近年、一般葬でも「故人の遺志により香典を辞退します」となり、家族葬では香典袋のやりとりが無くなり「御香典」の文化も無くなり始めています。