おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

黙祷の時間は祈りません

終戦記念日や災害の式典などでは黙祷の場面がニュース映像で流れます。お葬式の開式やお別れ会、社葬などでも黙祷が行なわれます。皆様、黙祷の役割はご存じですか?亡くなった方に向けて行われる参列者全員の黙祷には、一応の決まりごとがあります。


黙祷とは無言で祈る事だと思う人が大部分です。「黙」は声を出さないことを意味します。「祷」は祈ることです。この文字を使用したため、ほとんどの方が黙祷の時間は亡くなった人に祈る時間だと勘違いをされています。参列者の行動を見ていると、キッチリと目を閉じ、手を合わせて合掌し、口の中で御経らしきものブツブツ唱える人も見受けます。


しかし式典を見ていると、献花などで祈る時間は別に設けられています。黙祷と宣言された短い時間にわざわざ祈らなくともいいはずです。黙祷とは一言でいうと「動きを止めて声を立てずに瞑想する時間」のことを言います。そうなると、身体を揺らすことや手を動かす合掌はいけません。まして御経をモゴモゴと唱えることもご法度です。


本来の黙祷の目的は、自分を見つめ直し、心を整理する時間なのです。これからの式典に臨み、心穏やかに向き合う準備の時間なのです。黙祷と言われたら、少し頭をたれて身体を動かすことを止めます。雑念を取り払い、心を平穏にして、式典を迎える用意をします。


海外の多くの場所で災害やテロなどの犠牲者に黙祷が捧げられています。この外国の風習を日本が取り入れて黙祷の行動が始まりました。キリスト教の用語の「silent meditation」を訳した「黙想」から生まれた言葉です。式の前に自分の内面を見つめることで神と触れ合うことが出来る宗教的な言葉です。日本の柔道や剣道などの武道においても、精神統一の観念から稽古の前後に「黙想」が取り入れられています。この黙想が、追悼や慰霊祭の儀式一般でも用いられるようになり、「黙祷」という言い方に変わりました。


多数の参列者の黙祷がスムーズに進行するかどうかは司会者からのアナウンスにかかっています。まずは「お亡くなりになられた方に黙祷を捧げます」と丁寧な言葉で伝えます。参加者が座っている場合は、起立するようにアナウンスが必要です。「皆様ご起立ください」と促します。すべての人が起立したことを確認したら「黙祷」と一言で言います。「黙祷をお願いします」というと始まりがバラバラになり、静かな時間が短くなります。「黙祷」と単語のみで発生すると参列者全員が同時に黙祷を始める合図となり、いっぺんに静かになります。黙祷の時間は決まっていませんが、ほとんどが1分です。1分経過したときに「お直りください」または「ご着席ください」などの言葉で終わりを告げます。結構、黙祷のアナウンスは難しいのです。


終戦記念日の式典などでは黙祷の間にサイレンを鳴らす場合もあります。サイレンが鳴っている間が黙祷の時間になります。黙祷を英語で言うと「a moment of silence」と綴ります。momentは瞬間と訳しsilenceは沈黙です。つまり「少しの時間、沈黙して自分自身を見つめなおしましょう」という意味になります。外国でも心の準備をする時間なのです。


黙祷と言われたら、頭をうなだれ、手を両脇に下げて、気持ちを整理して追悼の儀式に臨んでください。自身の活動を止めて瞑想することが、弔慰にあたるのです。雑念を取るのが目的ですが、頭の中は見えませんから「俺は祈る」と言い張る人もいるはずです。

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