おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

宗教を考えてみませんか

貴方に外国人の友人がいて、その人から「あなたの宗教は何ですか」と聞かれたら、どのように答えますか?結婚式はキリスト教で、牧師様が「夫婦と認めます」と言ってくれました。お正月には家族で神社に初詣に行き、子供の七五三祝いも神社で行ない、家を建てる時は神主が来て地鎮祭をしました。ですが今まで参列したお葬式はすべて仏教です。多分自分のお葬式も子供たちがお坊さんを呼ぶと思います。


この答えを聞いた外国人はとても不思議がります。日本人は人生の中で「キリスト教」の信者になったり、「神道」を信じたり、最期は敬虔な「仏教」の弟子になるのです。


葬儀屋はすべての宗教を知る必要があります。ほとんどのお葬式が仏教で行われますが、仏教にも大きく分けていろいろな宗派があります。天台宗、浄土宗、浄土真宗、真言宗、日蓮宗、法相宗、華厳宗、律宗、融通念仏宗、臨済宗、曹洞宗、時宗、黄檗宗、これ以外にも細かく分けると数え切れないほどの宗派が出てきます。キリスト教にはカトリックとプロテスタントがあります。聖職者の呼び方も、神父様、牧師様と違います。神道には多数の信者を集めた伊勢神宮からできた「神宮教」や、出雲大社からできた「神道大社(出雲大社)教」などと、教祖の神秘的体験に基づいて成立した「天理教」「金光教」「黒住教」などと、山岳信仰の流れから生まれた「丸山教」「御嶽教」などがあります。ニュースになった「オウム真理教」も神道の一種です。政治と関係の深い創価学会、エホバの証人(ものみの塔)、幸福の科学のほか、外国籍の方も多くなりユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥ教、儒教、道教などの知識も必要です。


そもそも宗教とは、人間にはどうにもならないことが起きたときに、それを説明するために、生まれたものです。人間の力や自然の力を超えた存在への信仰を主体とする思想であり、教義、行事、儀礼、施設、組織をそなえた社会集団のことです。


人間がどうしても知りたい事が3つあります。しかし科学や医学がどんなに進歩しても答えが分からない事なのです。第一は「幸せ」とは何かが分かりません。主観的な心の問題ですから、あることを幸せと感じる人もいれば、不幸と感じる人もいます。第二に私達は何のために生まれてきたのかが、科学や医学で分かりません。お互いが殺しあう戦争をしますし、平和も追求します。そして地球を壊しています。第三は死んだらどうなるかが科学や医学ではわかりません。すべての人が直面する死と死後の世界の解答が見つからないのです。これらの「本当の幸福」「人生の目的」「死後」の3つの問題は、科学や医学では解決出来ませんので、答えの書いてある宗教に頼るのです。これが人類の存続する限り宗教が必要とされる理由です。


先日、お葬式で亡くなった人の奥様が話してくれました。ご実家は神社で神主の父親に育てられました。嫁ぎ先は当然仏教を信仰しており、今回のご主人のお葬式も檀家のお寺で行いました。
「信じているわけでは無いから、どんな宗教のお葬式でも良いと思うの。どうせお父さんはもう聞こえないし見えないから分からないしね。でもね、こうやって一生懸命お葬式の準備をすれば喜んでくれるって、一緒に居た私が一番良くわかるの」

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