おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

仏壇に写真は飾らないで

四十九日法要を済ませたので、後祭り祭壇を引き上げて欲しいとの連絡を受けて、喪家様のお宅に伺っています。いつものように、まず仏壇に向かい、送り出した故人様に手を合わせます。そして気がつきます。「このお家もご遺影写真が仏壇に飾ってある」と心の中でつぶやきます。


皆様のご自宅に仏壇がある場合、故人のお写真を仏壇の中に置いてありませんか?毎朝、仏壇に向かい遺影写真を見ながら亡くなった家族を偲ぶご家族は多いのです。弊社では写真作成の時に大きな四つ切の額と、別にキャビネ版の小さい額もお作りしています。その小さな額を仏壇の中に供えているケースを良く見受けるのです。


しかし正式な仏教の考えでは「仏壇に中には写真を祀ってはいけない」と説かれているのをご存知でしたか?そもそも仏壇は「自宅にあるお寺」と定義できます。毎日お寺に行くことは仕事や家事の都合で不可能です。その点仏壇が家にあれば、それを菩提寺の縮小版と見なしますので、お参りを苦労なく行うことが出来るのです。


仏壇はお寺の本堂と同じです。そこに飾るのが許されているのは唯一ご本尊だけです。そのような場所に故人の写真があると、礼拝の対象が曖昧になってしまいます。遺影写真はご本尊と一緒に並べて拝む対象ではないのです。又、仏壇の中は浄土の世界を表しますので、生前の姿が分かる物は、何も置いてはいけないと言われます。仏壇の中は故人の想い出の部屋ではありません。まして写真置き場でもないのです。


しかし、ここまでブログを読まれた方の中には知らずにお仏壇に写真を飾っていた方もおられると思います。今までにも「お仏壇に写真を飾ると故人にとって失礼になるとか不吉なことが起こるのですか」といった相談も受けたことがあります。その時はいつも私はこう答えます。


「仏壇の中に遺影写真を飾ることについては、いろいろな考え方があります。ですが、最も大切なのは、お参りする人の気持ちだと思います。お仏壇の役割は家にあるお寺という機能のほかに、家族が安らかな気持ちで暮らしていくためにあります。日々、お参りする人がしっかりと故人を思いながら供養するのでしたら、写真があろうとなかろうと大きな問題ではないと思います。仏教の考えで仏壇を捉えれば、写真を飾らなくなりますし、それを知ったうえで『やはり写真を飾りたい』と考える人も多くいます。決してマナー違反とか縁起が悪いということではありませんので気になさらないでください」


故人を偲ぶために写真は見える位置に置いておきたいと願う方も多いのです。それが仏壇の前列でも構わないはずです。ちなみにお葬式で使われた四つ切の遺影写真は四十九日までは白木の祭壇に祀り、それ以降は鴨居の上のスペースに飾ります。この際もお坊様は、仏壇の真上は避けて離れた場所に飾りなさいと言われます。仏壇の内部に遺影写真を飾るなら、これだけはご注意ください。ご本尊やご位牌が隠れないような位置に配慮してください。又、香炉やロウソク立てなど、火を使う仏具とは必ず離すように気を付けてください。


仏壇の中の故人の御写真は、今朝も貴方に「ありがとう」と微笑んでいます。

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