おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

自殺者は成仏できるのか

我々が住む日本では、年間3万人を超える人が自殺をしています。世界保健機関のデータによると日本は5番目の位置で自殺死亡率上位の国と認識されています。私がこの葬儀の仕事に就いて驚いたことがあります。自殺で亡くなる方がとても多いのです。このブログでも自死の旅立ちを多く綴っています。近年減少傾向にあった自殺者数の推移はコロナ禍が過ぎて再び増加に転じています。


自殺は残された家族に大きな影響を与えます。残された家族は自分が見逃した兆候があったのではないかと戸惑ったり、罪や怒りの感情を引き起こしたり、汚名を着せられたと悩みます。自ら命を断ってしまった人に、遺族の悲しみは直ぐには来ません。最初に来る気持ちは困惑、怒り、そして自殺を止めることの出来なかった後悔です。ほとんどの家族は「なぜ」と思うようです。遺書を残していない自殺者は多いですし、遺書が残されていても残された人々は悩み続けます。


家族がいつまでも悩む質問があります。それは
「自殺した魂は成仏できるのでしょうか。極楽に着けたのでしょうか」
お寺様の答えは
「成仏は出来るけれども、とても長い時間がかかります」


阿弥陀如来様の教えは、どのような死に方でも必ず浄土に生まれることが出来ると説いています。したがって自殺であろうと殺されようと必ず極楽にたどり着けます。しかし、自殺だけは死に方を自らの判断と行動で決めています。これは、この世に生まれて生きるということを自ら否定して断ち切る行為です。この責任は重く大きく、償いとして成仏までにとても長い時間がかかるのです。すんなりと極楽への道を歩めない自殺者の魂は長く現世をさ迷うことになります。昔からの幽霊の存在とか、廃墟や事故多発地点に住み着く地縛霊とか、事故物件の怪しい物音などは自殺者の霊が引き起こす現象と言われています。


質問受けたお坊様はご家族にこう語り掛けました。
「自殺者の魂を救う方法があります。さ迷う魂に救いをもたらす力が家族の思いです。極楽への道が見つからないのは、自殺した魂が過ちに気づかないからです。そのままではいつまでも覚めることのない悪い夢を見続けているような状態です。ですから、故人と関わりを持ったご家族がその魂に働き掛けてください。縁の深かったご家族の思いは必ず亡くなった方に通じます。そして極楽への道が見つかるのです」


「出来るだけ故人の魂に話しかけてください。故人がいまだに生きて座っているように感じてください。そして貴方が感じた人生の喜びを語ってあげてください。そして、さ迷う魂が救われるように祈ってください。貴方の愛は必ず届きます。そして道標となった愛の光を頼りにその魂は極楽の道を見つけることが出来ます。貴方の姿を見せる事で故人も一緒に自分の人生を見つめ直す事が出来るのです」


「この世に生まれたからには最後まで生きるというのが人間の宿命です。命をいただいたのは当たり前の事ではなく奇跡なのです。これを、残された家族が自殺した方に教えてあげることで、亡くなった方の魂は救われるのです」

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