おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

お彼岸は修行を行う期間

昨日は春分の日でした。この日を中日とする前後3日間の合計7日間を、お彼岸と呼びます。3月の春分の日の前後が春彼岸、9月の秋分の日の前後が秋彼岸です。我々が暮らしている、煩悩と迷いで溢れる現世の言い方を此岸(しがん)と呼び、苦しみから抜け出した安らぎの世界のことを彼岸(ひがん)と呼びます。


お彼岸の行事で皆様が行なうのが先祖供養です。お墓参りをするようになった理由は、彼岸という言葉をあの世と解釈して、亡くなられた人の供養に充てたからです。


お墓参りと共に仏壇の清掃も行いましょう。念入りにお掃除をして仏具のお手入れもします。お掃除を始める前に仏壇全体の写真を撮っておきましょう。仏壇には、たくさんの仏具が納められています。毎日見ていても中の備品を取り出した後は、意外と元の状態を思い出せないのです。写真の後、仏壇の中にある仏具を全て取り出します。お仏壇の上から下へと、毛バタキでほこりを取り除いていきます。その後、化学雑巾を使って内部を軽く拭いていきます。拭き掃除には乾いた柔らかい布が一番です。線香の煙で汚れがひどい場合は濡らした布を固く絞ってからこすり、すぐに乾いた布で拭き上げてください。天井の部分も煤だらけです。吊り灯篭の電気コードがあるので気をつけてください。内側の掃除が終わったら、外側も毛バタキでほこりを払い化学雑巾で軽く磨きます。仏壇の天板の上は荷物置きの場所ではありません。この際スッキリ片付けてしまいしょう。仏壇の内側、外側、仏具の掃除がすべて終わったら、写真を見て細かい仏具を元の位置に戻します。


掃除の後は新しいお花とお供えをします。この時期スーパーの棚には落雁(らくがん)などのお菓子が並びます。お供え物の代表的な食べ物が、春彼岸のぼたもち、秋彼岸のおはぎです。春の花である牡丹(ぼたん)と秋の花である萩(はぎ)にちなんだ呼び方です。ぼたもちはこし餡で、おはぎは粒餡で作ります。秋に収穫される小豆は春になると皮が固くなって食べづらいので、ぼたもちにはこし餡を使うのです。


先祖供養には中日の1日を使います。その前後の3日間で行なうことがあります。亡くなった後で三途の川の向こう側の彼岸に到達するには、六波羅蜜(ろくはらみつ)の修行をしなければなりません。波羅蜜とは修行を表す佛教用語です。彼岸の7日間の内6日間はこの行事に充てるのが、皆様の大事な役目でもあるのです。


六波羅蜜とは具体的にはどんなことでしょうか?
布施(ふせ)波羅蜜とは見返りを求めず、他人のために惜しみなく善行を施すこと。
持戒(じかい)波羅蜜とは戒律を守り、身を慎み、他人に迷惑をかけないこと。
忍辱(にんにく)波羅蜜とは身に起こる災いを受け容れ、耐えしのぶこと。
精進(しょうじん)波羅蜜とは誠心誠意の努力を日々続けること。
禅定(ぜんじょう)波羅蜜とは常に静かな心を持ち、動揺しないこと。
智慧(ちえ)波羅蜜とは怒りや愚痴貪りに捉われず、物事を正しく見極めること。


1日毎にこの修行を行ってください。これを実践できれば、心豊かな日常を過ごせます。お彼岸とは、ご先祖に感謝を捧げるだけでなく、此岸のこの世に生きる我々が六波羅蜜を修行して実践し、彼岸への到達を願う期間でもあるのです。

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