おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

いつか来る親と別れの時

実家に里帰りしたスタッフがしみじみと話し始めました。「久しぶりに母に会ったら、めっきり年老いていたのに驚いてしまった」話を聞いてみると、外出する機会も減り家に閉じこもり、趣味などに対しての欲も無くなり、元気も気力も失くしているように見うけられたとの事です。「いろいろと聞いていたらすごく切なく淋しくなった」と呟いていました。ムラゴンの皆様のご両親はまだお元気ですか?


お葬式の打ち合わせの時によく聞く言葉があります。それは「こんなことになるのが解っていれば、少しはお葬式のことを聞いておけば良かった」という反省の言葉です。このブログを読まれている方は、自分の親にいつか来るお葬式のことを聞いたことがありますか?


ほとんどの方は「生きているうちに、死んだ後のお葬式について聞いていいの」と二の足を踏みます。皆さんは大事な親が亡くなる事についてはあまり考えたくありません。中には、縁起が悪いことは避けていきたいと、話題にすることさえ絶対にしないと思う方も多いはずです。ですが、イザその時が来て「親から何も聞いていなかった」となると、お葬式の準備に余計な時間がかかったり、故人の希望通りの葬儀を行えなかったりとの問題が出てきてしまいます。と言っても「いきなり聞くと死ぬのを待っているようで怒り出すのではないか」と考える方も出てきます。出来れば普段の何気ない会話から少しずつ聞いていきましょう。


生前に聞いておくとお葬式の準備がスムーズにいくことの一つは宗教です。お葬式の打合せの時まで自分の実家の仏教宗派について知らない人が結構多いのです。御寺の境内にお墓がある場合はその菩提寺にお葬式をお願いしないと、お墓に入れなくなる場合があります。お坊様を呼ぶつもりなら、何宗のどのお寺なのかぐらいは聞いておいてください。今は無宗教葬を選ぶ方も多くなってきています。生きているうちに家族の宗教信仰を確かめておくのは大事な事です。
お葬式をどのようにするかを尋ねておくことも必要です。会場の選定に迷う方が多いのです。ほとんどが葬儀会館ですが、中には自宅で家族葬にして欲しいとか、長年のお付き合いがある菩提寺であげて欲しいとのご希望もありました。
遺影の写真を選んで決めておくことも遺族の手間を格段に楽にします。何よりも故人が希望した写真には誰も依存を唱えません。自身が好きだと思う顔と他人が素敵だと思う顔は違うのです。
「誰を呼んで欲しいか」も大事な質問です。家族以外の親戚には参列して欲しくないと思っている親もいるのです。逆にどうしても参列して欲しい人をリストにしておくと、お葬式の連絡が楽になります。人数を把握すればお葬式の規模と内容が決まります。


生きているうちにあらかじめお葬式の希望を聞いておくことにより、迷うことなくスムーズに準備が出来ます。そして無事に終わった後は「望み通りの内容のお葬式にすることができた」と思うのです。生前に死んだ後のことを聞くのは聞きづらいことですが、宗教の有無や儀式の場所そして本人の望む内容などを聞き取ることは必ず双方の利点になります。


親が望むお葬式を知っておくことは必要なのです。親に何も聞いておらず、終わった後に「こんなお葬式で良かったのだろうか」と後悔する喪家様は多いのです。最期に私からアドバイスをしました。「話が出来る時にぜひ感謝の気持ちを言葉で伝えてください。元気で長生きしてほしいですが、いつか来る突然の別れの為の準備は必要です」

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