おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

火葬までは待たされます

都市部で火葬場の混雑が深刻化しているとマスコミが報道しました。それに伴い、ご遺体を長期の日数の間、火葬できない「火葬待ち」が問題になり始めました。通常であれば亡くなった翌日がお通夜式で、その次の日が告別式と火葬へ進む流れです。ところが火葬場の混雑が顕著になり、待たされる日数が最低でも一週間以上が現状になり始めています。


葬儀組合の会合で話題になる項目があります。それが「火葬まで待たされる日数が確実に増えてきている」です。少し前までは、亡くなったら病院からご自宅に搬送し、その日にご自宅での仮通夜を行いました。翌日が葬儀会場でのお通夜式、そして次の日が葬儀式及び告別式と進行して、火葬場に向かい火葬になりました。亡くなってから火葬を行うまでの平均日数は、おおむね2日から4日間程度でした。友引をはさんでも最長で4日も待てば確実に火葬が出来たのです。


ところが近頃「火葬までに10日も待たされた」などの話も聞くようになりました。統計からも数字が出ています。ある市営斎場の場合3年前の数字は、死亡日から火葬までの平均待機日数3.02日でした。それが現在では5.01日に延びています。


火葬までの待機日数が増える理由は年間死亡者数の増加です。現在の日本は少子高齢化がすごいスピードで進んでいます。人口構成の割合が多い1947~1951年生まれの団塊世代の高齢化と、その子供である団塊ジュニア世代も2040年には65歳以上となります。いまでは日本人の4人に1人が65歳以上の高齢者です。そして次々と死んでいきます。年間167万人の死亡者で火葬炉がパンク状態なのです。


ですが火葬場の建設や炉の増加は遅々として進みません。自治体も理解はしているのですが火葬炉は最低でも一基につき一億円程かかると言われています。なかなか予算がつかないのです。なお悪いことにほとんどの自治体の火葬炉は耐久年数を迎えています。そうなると火葬炉の稼働日数や火葬時間に制限が設けられます。ムリをすると壊れてしまうのです。火葬炉1日で焼却できる上限を決めます。なおかつ定期的なメンテナンスが必要になり、常時稼働が出来なくなります。以上の事から需要と供給のバランスが崩れ、大幅な火葬待ちの死体が発生し始めているのです。


火葬待ちの日数が長ければ長いほどご遺体安置のための追加費用が必要になります。通常、葬儀屋のプランには2日分の安置にかかる料金は含まれていますが、それを超えた場合は日数分の追加料金を支払います。保管料金の内訳は安置施設の場所代とご遺体を冷やすためのドライアイスの料金です。場所代は一日あたり10,000円程度、ドライアイスの料金は1日あたり5,000円〜10,000円が相場です。
つまり1日追加で安置するだけで15,000円〜20,000円程度の費用がかかる計算になります。ご自宅に安置される場合ならば葬儀会館の場所代は不要となりますが追加のドライアイス料金は必要です。また必要なドライアイスの量は季節や部屋の温度によっても変わります。


高齢化による死者数の増加は続きます。火葬場が足りない状況も続きます。「火葬待ち」は人口が集中する都市部で起きている社会現象なのです。火葬場の数を増やすことで解消できますが、前述の通り火葬場の新設はそう簡単にはできません。ムラゴンの皆様、これからは亡くなっても焼きあがるまでは結構待たされますよ。

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