葬儀場は立地も大切です
弊社と同じ市内に新しい葬儀会館がオープンしました。少子高齢化社会がすさまじい勢いで進み、多死社会と言われる現在です。火葬場は予約が取れない程混みあい、亡くなっても数日間は火葬が出来ない状況になりつつあります。こうなると葬儀屋や葬儀会館が新しく開業するのは、住民にとってサービス向上につながりますし、同業者としても嬉しいです。同時に役所には火葬炉の増設も必要だと請願しています。
新規オープンの見学会に伺いました。敵地見学と共に同業としての礼儀も兼ねてのご挨拶です。実は、オープンの連絡を受け取った地図を最初に見た時に感じたことがあります。それは立地です。「なんでこんな不便な場所に建てたのだろう」です。
新規の葬儀場の計画が公になると必ず反対運動が起こります。気持ちはわかります。毎日自宅の前を霊柩車が通るのは見たくありません。まして、連日死体が隣の施設にあると考えただけでも気持ちが悪くなるはずです。結果不便な場所に建つのです。
この施設も立地が駅から遠く、とても徒歩圏とは言えません。唯一の交通機関はバスですが、これも便数が少なく、なによりも、最寄りのバス停からも遠いのです。時刻表を調べると鉄道の駅に向かうバスは少なく、最終バスは夕方には終わります。お通夜式の後は駅までの公共機関が無いのです。会葬者には送迎バスのもあるとの事でしたが往復の便数が限られているようです。こうなると当然、タクシー利用か自家用車で来館しかアクセス方法が選べません。
お葬式の会葬者はほとんどが高齢者です。しかしマスコミの啓蒙活動も加担している現在は、高齢者の運転免許の返納が声高に言われています。高級官僚のブレーキとアクセルの踏み間違え事故以来、高齢者が起こす事故が連日大きく報道されます。高齢者が自家用車でお葬式に伺うのは、とても難しくなり始めています。
お通夜の参列者のよく見られる光景があります。旧友と久しぶりの再会しこの後に「故人を偲んで近くで一杯やろう」との会話です。しかし参列者が自家用車で参列するとこの飲酒が出来ません。故人がつくってくれた、せっかくの機会なのです。「出来れば近くで一杯やりながら昔話でも」と弔問に訪れる高齢者は多いのです。
自家用車以外の交通手段が無い立地では、弔問に来る高齢者にとっては来場がとても難しいのです。なんとか着いたにしても帰路はさらに大変になります。来るときは使えたタクシーも帰宅時には葬祭場からはタクシーがつかまらずに困ります。お葬式において約7割の方がお通夜に出席します。お通夜は18時開始が一般的です。タクシーで移動する場合は夕方の渋滞に巻き込まれてしまい遅れる事もあります。
葬儀屋として願望があります。多死社会に入りお葬式の件数は右肩上がりです。旅立ちのセレモニーの会場は、公共交通機関を利用したアクセスが出来る場所に作って欲しいとの願いです。街はずれの葬祭会場でも交通の便が良ければ、ゆっくりと故人を偲ぶことや旧知との再会も可能です。
これから新設する葬儀会場は、可能な限り駅近で徒歩圏での立地が、喪家様とご会葬者様双方への負担が少なく、安心してご利用いただけると思う私です。