おくりびとの日記

数多くの仏様を成仏させた「おくりびと」が、お葬式の出会いを綴ります。終活の参考になれば幸いです。

死後の片づけは大変です

葬儀屋にはいろいろな営業が来ます。ご寺院紹介業、葬儀備品販売、仕出し料理売り込み、司会やセレモニースタッフ派遣業、遺影写真作成業、仏壇店、石材店、広告店まだまだあります。この頃増えてきているのが遺品整理を代行しますと言う業者の営業売り込みです。


これまでは、家族が亡くなると故人の部屋の片づけ、清掃、不要品の処分などの遺品の整理はご遺族の手で行われるのが一般的でした。しかし近頃では時間的にも人手の面でも、ご遺族だけではどうにも出来ない状況になってきています。特に高齢化社会の急速な進行と、核家族化が進む社会構造の変化で家族だけでは難しいのが現状です。それに伴い遺品整理業の需要が高まりました。片づけが儲かると考え代行業者も年々増えています。


当然トラブルも多く聞くようになりました。特に多いのが、遺品整理業者と思って頼んだところ不用品回収業者きて、家財のすべてをトラックに積み、引き取り料として高額の料金を請求されたとか、買い取り業者が来て、金目の物だけを持ち去り、後はそのままで帰ってしまったなどがあります。不用品回収業者は家財を遺品として、取り扱いはしてくれません。当然扱いが雑になり後日困ったケースが起こります。買い取り業者は家財をすべてひっくり返して、お金になる金品だけをあさり、後はそのままの乱雑な状態で帰ります。


片づけと称する違法行為があまりにも多発し問題が大きくなり、遺品整理士認定協会が発足されました。認定された遺品整理業者は家財を遺品として見分します。例え処分するとしても、故人の想いと、残された遺族の気持ちを整理する内容で丁寧な作業を行います。


家族だけでは難しく業者の手を借りる場合、最初に決めるのが遺品整理のスケジュールです。可能であれば相続の条件がある親族の方と整理する前の家財を見ることで後のトラブルを避けることも出来ます。特に賃貸物件の整理ですと、いつまでに終わらせるという日を決めておかないと家賃が発生してしまいます。また公営団地などの場合は、亡くなってから何日以内に退去しなければいけないなどの契約になっている事もあります。


賃貸の場合は、ただ部屋の中の物を整理するだけではありません。入居時に設置してある照明器具やエアコン等の確認も必要です。もしそれを故人が自分で購入した家財に付替えていれば元に戻します。インターネット契約でレンタルしている通信機器の返却も必要です。当然、電気、ガス、水道の手続きなども管理会社と確認しながら作業をしなければ、トラブルとなります。遺品整理には、片づけ前に取り掛かる作業が結構あるのです。


業者によっては家財の処分を家族に任せることもあります。家財を廃棄するにはゴミの分別が必要です。事前に市役所に問合せをして分別しながら整理作業しないと回収を拒否されます。近年では故人が使っていたパソコンやスマートフォンのデジタル遺品の中にどのようなデータがあるかなどを確認することも必要になります。部屋の中の物だけでなく、外に置いてある車やバイク、自転車なども整理の対象です。スマホアプリには月々の課金が掛かり、車は税金が来ます。


遺品整理を家族だけで行なうには、多大な体力と時間がかかります。費用はかかりますが、良心的な遺品整理業者を見つければ、細かい分別やリサイクル、換金なども行ってくれます。遺品整理でどこまでをお願いするか、ご遺族でどこまでできるかを考えて、業者に相談してください。遺品整理とは、生前気づかなかった故人を知る最後の時間なのです。

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